[コメント] ニック・オブ・タイム(1995/米)
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突然殺し屋にされてしまった男の不安とその脱出を描く作品で、劇中に流れる時間と実際の時間をシンクロさせ、主演にデップを用いて極限状態を表そうとした作品。
ワンアイディアを膨らませて作ったような作品だが、色々と小技を効かせて男の不安というものをよく表していた。実際の時間とシンクロさせる方法は既に『真昼の決闘』(1952)で試みられている手法で、本作も時計をよく出すことで時間を上手く使っていた。又映像もわざとぶらせるように使われ、不安定な映像を用いることで不安を示していた。それに神経質そうなデップの表情が良く合っていた。
褒めるところは確かに多いし、その効果もちゃんと計算されているのだが、なんでか今ひとつのめり込めない作品となってしまった。
不安を前面に出すことには成功してるが、何故か不安ばかりで肝心な緊張感が感じられないことが先ず第一ではないかと思う。『真昼の決闘』は純粋なアクション作品だったから、その緊張感の持続が良かったのだが、様々な伏線が必要なサスペンスだったため、伏線が上手く機能しなかったことと、最後の最後まで何故素人を殺し屋に仕立てねばならなかったのか、その必然性が語られることがなかったため、飽きが来てしまったのだろう。もうちょっと物語に力を入れてくれれば傑作にも成り得たんだろうけど。
それに最後の最後で何故スローモーションを使った?あの瞬間で時間軸を合わせる意味が消失してしまった。リアルタイムで演出するなら、その枷を逆手に利用するくらいでないといけない。観てる側に「あっ」と言わせてくれないとね。
キャラはやっぱりデップ、ウォーケン共に流石といえる演技を魅せてくれるし、二人の対峙シーンはもの凄い緊張感がある。しかし、お互いにやってることがずれまくってるからなあ。
致命的なのは、あのオチになるなら、最初からウォーケンが殺してれば良かったじゃないか。としか思えなかったこと。
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