[コメント] ビクター/ビクトリア(1982/英=米)
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1970年代の前半はハリウッドではニューシネマが大流行。自然映画も低予算で暴力的なものが多く、伝統的手法の作品は全然振り向かれなくなっていた。殊に大打撃を受けたのがミュージカル。リアル志向の時代にあって、いかにも作りものじみたミュージカルは敬遠されるのは分かるような気がするが、その凋落ぶりは激しく、時折大金をかけて「夢よもう一度」とミュージカルが作られる度、惨々たる結果になっていた。それで本作も、残念ながらその大作ミュージカルの一本に入ってしまう。実際雰囲気としても80年代に作るにしては古めかしすぎたし、登場するキャストもヴェテランばかりとあっては、やはり受ける要素が無かったのは事実だった。
…とは言え、本作が駄作か?と問われれば、とんでもない。物語性、キャスティング、演出全てが見事に噛み合った佳作だ。
上背があり、がっしりした体格、ショートカットを好む髪形と、アンドリュースは元々が中性的な魅力を持っているので、男を演じるのははまり役で、さらにコメディとの相性が良い。そう言うことで本作はアンドリュースの魅力を見事に捉えていたし、脇を固めるヴェテラン勢も、強烈な個性を発揮しつつ、引くべきところはきっちりと引いてアンドリュースを立てる。この辺さすがエドワーズ監督だな。監督に特有の野暮ったさが全然ないのも完成度の高さにつながっている。コミカルな性的ネタも結構多く、暗喩を解すとかなり無茶な作品だとも思える。
それと、先に「古い古い」と連呼したが、ゲイとか性的なネタを殊更嫌っていたハリウッドがようやくこの設定で映画作れるようになったという意味では、実は本作は最先端を行く“新しい”作品であったのも事実。
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