[コメント] ファイブ・イージー・ピーセス(1970/米)
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前年に超低予算『イージー・ライダー』(1969)が大ヒットを記録し、アメリカ映画界はニュー・シネマブームへと入っていったが、同じ製作者のバート=シュナイダーとリチャード=ウェクスラーが再びロードムービーとして手がけた。芸術家一家の出身で将来を嘱望されたが、家を飛び出て放浪していたというラフェルソン監督自身の体験を元にした作品と言われる。ちなみに“ファイブ・イージー・ピーセズ”とは初心者向けのピアノ教則本のこと。
まさにニュー・シネマと言った内容で(他のニューシネマ作品と較べると、主人公の年齢をやや上に持っているけど)、恵まれた環境に置かれているはずの主人公が、とにかく苛ついて苛ついて仕方なく、目の前にあるものに何でも噛みついている。とにかく苛ついてはいるが、気は強くないので、結果的に引きこもり逃げ回るしかない。そんな人間を、そのまま描いてる感じ。
この作品を観たのは結構昔で、丁度会社辞めてフリーターやってた時期にビデオで観たのだが(観たの自体『イージー・ライダー』よりも早かった)、身をつまされるような気分にさせられたものだ。長いこと軽度の鬱に悩まされていた事もあって、あの時は本当に。
でも、本作が受け入れられたのは、まさにそう言っ心境の人間が多数いた時代だったから。50年代の高度成長時代を経て、アメリカは物質的には非常に恵まれた状態にあった。特に世界大戦や朝鮮戦争を通して命を賭けて戦い、その後でがむしゃらに働いた世代が惜しげなく子供にものを与えていった。だが、いくら物質的に豊かになっても、それは子ども達にとっては幸せにはなれなかった。
確か養老孟司だったかと思うが、この当時のヒッピー世代のことを、「持つことに罪悪感を覚える最後の世代」と言っていた。まさにボビーはその世代を代表する存在だったと言えるだろう。
『イージー・ライダー』で存在感を見せていたニコルソンが、本作によってブレイク。その後の映画を引っ張っていく存在となっていく。
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