[コメント] ヤンキー・ドゥードゥル・ダンディ(1942/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
本作はコーハンの伝記であると共にアメリカのボードビルの歴史就中アメリカ史の一側面を描いた作品で、資料としての意味合いはとても高い。一応ジャンルとしてはミュージカルになるが、実際に行われたミュージカルの舞台を再現したと言う事で、むしろ純粋な伝記であり、ミュージカルにはこういう作り方も出来る。という一つの可能性を切り開いた作品として見ることも出来よう。主人公となったコーハンが存命と言うこともあり、この時代に作られたにしては、着眼点がとても面白い。
アメリカの歴史は、その一側面として芸人の歴史でもある。広大な大地を持ち、歴史を持たないアメリカにとって、芸とはヨーロッパのものとは異なり、祭りではなく、純粋な娯楽として進化していった。なにせ広大な土地を耕さねばならない人々である。乏しい娯楽を何よりも楽しみにしていただろう。そのような人達に笑ってもらうために芸は作られ、芸人は研ぎ澄まされていく。
だが、歴史が進むに連れ、芸というのも様変わりしていく。大衆が最も必要なものであるという認識は一部特権階級の人々が作り出す幻影にもなっていった。劇中戦意高揚のために芸が使われているシーンも見受けられるが、まさしく芸とは、別な意味で見えない力を持ったものとして利用されてもきたのだ。
そして映画の発達に連れ、ボードビルは娯楽のトップから引き落とされていく…一人の芸人を丁寧に描くだけでも様々な側面を推測させられて楽しい。特に本作はつなぎの上手さによって、しっかり歴史を感じさせられる作品だ。
本作の場合、主役にキャグニーを持ってきたのも大きいだろう。元々はアステアが演じるはずだったとも聞いているが、アステアだったらもっと軽快に、現実離れした話に落ち着いただろうから、むしろキャグニーのようなギラギラした人物によって演じられることで、本作は本当の意味でリアリティを持つことが出来るようになったとも言えよう。 主演のキャグニーはそれまで数々のギャング映画で有名になった人物で、彼の演じるベイビー・フェイスは後のギャング映画では欠かせない人物描写となったが、キャグニー自身はそれをあまり好ましく思っていなかったらしく、本作のことを「生涯の誇りであり、一番好きな出演作」だと語っているほど(キャグニーがこの話を受けたきっかけは共産党院疑惑を払拭するためだったともいうが)。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (0 人) | 投票はまだありません |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。