コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] レマゲン鉄橋(1969/米)

ギラーミン監督の魅力も駄目っぷりも見事に表された作品。トータルで言えば「素晴らしい」。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 物語としては割合単純な構造で、人間的なドラマ性は低いのだが、この作品に関しては、人間ドラマは不必要。戦争、殊に戦闘という事実こそが本作の主人公であり、完全に戦いに特化した作品なのだから。

 ギラーミン監督は大作監督として知られるが、この人の作風を見ると、人間ドラマに関してはかなり薄味だが、スペクタクルには大きな力を見せてくれる…まあ、ぶっちゃけ言えば、破壊シーンにこそ本領発揮する監督だ。

 その意味で本作はひたすら破壊の快感を満たしてくれる作品で、ギラーミン監督の最大の魅力を伝えてくれる作品と言って良い。

 破壊シーンの凄さは特筆すべきだが、それは盛り上がりの巨大建築の倒壊や、ラストの鉄橋の攻防だけではない。地味かもしれないけど、本作の破壊の快感は市街戦の細かい描写にこそある。

 市街戦の醍醐味とは、複雑な地形と数多くの遮蔽物を縫い、見えない敵と戦うという点にある。この場合、攻める側にとっては、充分な火力をもって遮蔽物ごと敵を押しつぶす快感が、一方防衛側にとっては、少ない兵力を機動力と地の利を生かし、絶大な兵力を持つ敵にダメージを与えていくという点にある。特に第二時世界大戦の後期になると歩兵の武器も火力が上がり、歩兵が戦車を撃破する事も可能となるため、その描写も映えさせられる。

 戦争映画にはこう言った二面の描写が可能なのだが、普通の映画だと、それはどちらか一方でしか見ようとせず、それでは魅力は半分しか伝えられない(そもそも市街戦を主題にした作品って少ないという根本的な問題があるけど)。その両面をしっかり描いてる代表作が本作だとも言える(近年の『ブラックホーク・ダウン』(2001)と言うとんでもない作品があるのはあるけど)。

 本作は基本は連合国側が主体だが、戦闘においてはドイツ側の視点から見てるシーンも多々あり、戦闘の魅力というものを存分に見せつけてくれている。

 ただ、残念ながら、本作は戦闘シーンが戦闘シーンでしかないと言うことだろうか?ストーリーをドラマパートのみで展開させるのではなく、戦闘そのものに物語性を加えることができたはずなのに、それが中途半端に終わってしまった。パートパートの戦闘シーンが物語に絡まなかった分、薄いドラマ性に負う部分が高すぎて、作品全体として間延びした印象を受けさせてしまう。

 ギラーミンだからこそここまで出来た作品だが、ギラーミンだから作品全体として失敗してしまったともいえるだろうか。物語で本作を観ようとするとかなり退屈する。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。