[コメント] BLUES HARP(1998/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
『影武者』、『ロッキー』、『ミラクル/奇蹟』、一部のハードボイルド作品といった、生き甲斐を見つけて突っ走るタイプの作品としては最も好きです。
同性愛者のヤクザが、主人公である異性愛者の若者に恋をしてしまう話しです。相手は性的にノーマルであって女性と同棲してしまうため、ヤクザは生き甲斐に向けて努力をしようにも出来ない。だけど100%夢が叶わないわけでもないという、この残酷な物語を誰が書いたのか? 何と「チロルチョコの社長」だそうです。プロがおびただしい数の型にはまったハードボイルドを量産する中で、素人の書いた渾身の一作が奇跡を生んだ一例と言えます――三池監督が脚本の手直しをしていますが、シーンの削除のみであり、追加はありません。
ヤクザは同性愛者である事を隠して慎重にコミュニケーションを図るわけですが、とうとう「お前俺の事好きか?」と聞いてしまいます。しかしこれも「友達として」という空気を出しながらの質問なので、主人公は「(友達として)好きだよ」と、爽やかな笑顔で返答。騙したような気になって気まずい表情をするヤクザ。
創作作品における同性愛という題材は、見世物小屋的な物になりがちですが(今流行りのBLも例外ではありません)、この作品は真摯に扱っていると思います。
生々しい男同士のカラミはありません。主人公は普通の生き甲斐を見つけるので、こちらの視点は爽やかな青春モノであり、またノスタルジーを強調した悲しい作風なので、「同性愛モノ」と構えて鑑賞する必要はありません。
無理に分類するならハードボイルドなので娯楽性も有り、悲しい展開であるものの、ラストはきっちり盛り上がります。キャストもハーモニカを吹くシーンも最高です。良い作品です。
余談ですが、今作で主人公の恋人役を務めた女優は「意図的」としか思えない存在感の無さ。三池監督もこういうのが好きなんです。
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