[コメント] バンビ(1942/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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これの初見は小学校低学年。学校の体育館にスクリーンを張って上映された作品だった。私が思い出せる限り最も古い映画の一本だ。そして多分、初めて私に衝撃を与えてくれた映画でもある。
確か私が子供時分に持っていた鹿のぬいぐるみはバンビだったはずなので(記憶は相当曖昧)、名前くらいは知っていたが、それをスクリーンで観られたと言う事だけでも充分(この時は吹き替え版)。
記憶さえも曖昧な、それでも凄い感動を受けたと言う事もあって、LDが出た時は真っ先に購入した。それで拝見し、改めてそのすごさに感動(LDは字幕版を買ったため、バンビがスカンクに対して「FLOWER!」という下りは、記憶では「はぁ〜なっ?」だったはずだが…とか思い出しながら)。
観た当時は当然小学生低学年だけに、何かこう胸にわき上がる感情があっても、それを説明することが出来ないわけだが、今なら多少はその時感じ取った感情を説明できそうだ(一言「感動した」で済ませられるのを長々と説明する方が変?)。
それで改めて本作の魅力というものを考えてみると、先ず動物達のリアリティ。この作品のためにディズニーは2匹の子鹿を買い、スタッフが徹底的に子鹿を観察することによって出来たという。今だったらビデオでお手軽に出来ることだが、当時は馬鹿高いフィルムを膨大な量使って撮影し、更に実際に手に触れてその感触を大切にした(宮崎駿監督はアニメスタッフに徹底的に「生」の感触にこだわらせようとするので有名だけど、この故事(?)に倣ってるんだろう)。お陰で当時の稚拙な技術にも拘わらず、完成度は無茶苦茶なレベルで高い。実際現在とは較べものにならないスタッフと金をかけたとは言っても、これだけ質が高ければ、それこそ永久保存されて、元が充分に取れるぞ。そしてその残酷な部分も含めて生きると言うことはどういう事か、と言うことを観客の前に出している。
バンビというと子鹿の姿ばかりがメディアには流れるが、それは物語のほんの一部に過ぎない。この物語は成長していく過程を丁寧に描いていくことが重要なんだから。立派な牡鹿になって、ライヴァルの牡鹿と角突き合わせて戦うシーンの勇壮さ。母を失いながら、逃げることしかできないその無力さ。どれもこれも、生きると言うことの残酷さ、悲しさと、それを越えて行かねば生きられないと言う強烈なメッセージを内包していた。そして生命の連鎖は続いていく…
単純にこれを動物の生活をアニメーションにしたと言うだけではない。この作品の持つイメージとは、擬人化にこそあった。リアルな動物の描写と相まって、生命とは何か。と言う壮大なテーマが内包されている。この作品の肝は自分自身をバンビになぞらえることが出来る。と言う点にこそあるはずだ。
生きるとは単純且つ力強い。激動を経ても、自分が生き続ける限り、生命の強さは続いていく。そしてやがて自分の跡を継ぐものが現れ、自分の生命がバトン・タッチできる。その単純なすばらしさをここでは見事に映し取っている。
そう。生きると言うことは非常に単純だと言うこと、そして大変力強いものであると言うことを、そこで感じた…の、だろう(さすがに小学生低学年の気持ちは今となっては推測も難しいか)。
当時アニメはあまりにも金がかかることがあって、主に短編で作られていたのだが、ディズニーは本作の投入により、長編アニメーションは十分に採算に合うことを証明してくれる。その後ディズニーの一つの看板として“トゥルー・ライフ”シリーズを作り続けていくことになる。
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