[コメント] ポリー・マグーお前は誰だ?(1966/仏)
何回観てもやっぱり好きだわこの映画。映像はもちろん非の打ち所がないし、ポリーは可愛いし、家具や小物なんかのディテールも見ていて飽きないし、当時のモードも味わえるし、ルグランの音楽も当然素晴らしい。どの角度から見てもハイセンスで、見ているだけでウキウキしてしまう。
ビジュアル面だけですでにお腹いっぱいってくらい、本当は映像と音だけで充分満足なんだけど、実は印象深い台詞も沢山出てくるから参ってしまいます。当然ながら規模は全く違いますが、自分もなんとなくかじっている世界なので、モデルという嘘くさい存在について非常に考えさせられました。また自分が生きていくうえで「お前は誰だ?」と常に自分に問いかけていかなけらばならないと思わせてくれる妙に哲学くさいところもなんだか良い。全然説教くさくないしこっちも素直に聞く耳が持てるという感じ。
それから登場人物もみんなどことなく憎めない。『ロバと王女』の王子も色んな意味でヒドかったけど、この王子もある意味(ってか正攻法で?)ヒドい。あの部屋といい、一人遊びといい、無限の妄想といい、どこか滑稽に見えるんだけども、王子の孤独感を効果的に表現していたと思います。また若き日のジャン・ロシュフォールもいい味出してるし、胡散臭すぎるマクスウェル女史のキッチュな存在も印象深い。 そして問答無用のポリー・マグー。ウサギみたいな大きな前歯やソバカス。そういうものは全てチャームポイントにもなりうるんだって前向きに捉えさせてくれる説得力が、彼女にはある。儚さや脆さの中に、ガチガチの説得力がある。それがマヌカン・モデル・カバーガールってもんだよ。
そして極めつけは取ってつけたようなラスト。なんじゃいこの急展開!っていう寝耳に水的な展開は、それでも結構衝撃でした。またこれが無駄に陰影を効かせたコントラストの美しい映像で、まさに身も心も釘付けになってしまいます。なんだろうなコレ。人を惹きつけるツボを心得てるっていう手馴れた感じがイヤラシさナシで伝わってくる。まさにこれがパイオニアってもんだ。
そうやってシッタカ丸出しで感心している私(やその他大勢の人)にとどめを刺すようなエンドロール。もう本当ごめんなさい。あの物悲しいイラストと旋律のインパクトと言ったら…!「映画」としては弱い部分も沢山あるんだけど、でもやっぱり数年に1回どうしても見たくなってしまう不思議な魅力がこの作品にはあります。
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08.03.24 記
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