[コメント] バンド・ワゴン(1953/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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ミュージカルの歴史そのものを振り返ったミューカル・コメディ。当時ハリウッドは空前のミュージカル・ブームであり、その歴史を振り返ることで“今”を見つめ直すことを主眼とした作品と言っても良い…と言っても堅苦しいものではまったくなく、ミュージカル・レビューの間に軽妙なストーリーを入れると言う、ミュージカルの基本部分はきちんと押さえられており、それゆえにバランスの取れた良質な作品に仕上がっているのが特徴。とにかく楽しいし、いつも通りのアステアの軽妙なシャレとダンスを堪能できる、魅力的な作品。
映画史に名前を残す人物はそれこそ数多く存在するが、ある時代の映画そのものを引っ張り、数々の実験的要素を取り入れさせた人物として忘れてはいけないのがアステアと言う人物。もちろん役者としての実力は折り紙つきだが、同時にこの人物を際立たせるために映像表現は格段の進歩を遂げ、特撮も多くの貢献を受けている。映画そのものに貢献した偉大なる人物である。ただ、彼の役どころは決して重々しいものではなく、むしろ軽快に、洒だつにすいすいと世の中をわたっているような人物として描かれるのだが、それゆえにこそ重要なのだろう。傍目から観る限り軽い人物でも、その人物像を作り上げるために行っている努力は涙ぐましいもので、特にダンスシーンは最新の注意を払って行われてもいる。
本作はそんなアステア自身のルーツを探ると言った意味でも重要な意味を持ち、苦労を重ねつつも、決してユーモアを忘れず、夢を与えるダンスを提供し続けるダンサーをしっかり演じきっている。
。ここでアステアがまるで自分自身を思わせる役柄を演じているのが興味深いところ。売れていると言うことは、それだけで実はかなり不安が大きいのだろうな。大スターであればあるほどプレッシャーの重圧で実は苦悩が深いと言う、ちょっとした皮肉心を見ることもできるだろう。
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