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[コメント] 激動の昭和史 沖縄決戦(1971/日)

大日本帝国軍をそのまま映した事による効果が非常に大きい。それ自体が痛烈なメッセージ。日本人は昔の自国の姿を見て思い入れるからその様に苦しむ。
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







鬼畜米英といって県民に自決を強い、子供には鉄血勤皇隊で戦闘参加させる。その日本の精神世界の行き先が八方ふさがりで、第二次大戦に参戦してなくてもどこかで大日本帝国というのはどこかで崩壊しただろうなと考える。

ウクライナの事があったから見たというのが正直なところ。見て良かった。

ロシアはプーチンという独裁者が帝国主義者で第二次大戦からかなりの時間が経った現在に他国を自国の生存圏として見るという考え方を持っていることがいまや多くの人に理解されたが、チェチェンやシリア介入からそういう考え方の持ち主であったという事は判る人には判ってたということで。

そういう勢力圏みたいな話は戦前に日本とアメリカの間にもあって、韓国と台湾を併合した日本とフィリピンを植民地とし、太平洋の島々を抑えたアメリカの勢力圏がぶつかり合うという側面はあった。今は日本は良くも悪くもアメリカの勢力圏だし。

この沖縄戦を元にすると集団自殺した県民を導いた大日本帝国の方針は愚かだったと言えるのだけれど、他方ではソ連を相手にした戦線ではシベリア抑留なんてのもあって戦争というのは負ける相手によって帰結が違うということでホロドモールを経たウクライナに思いを馳せざるを得ない。

ソビエト連邦が解体した時にそれがあくまで解体で、日本みたいに体制を強制的に変えられるという事に至らなかったのも問題と考える。やはりソ連の各要素が悪さをしたのだ。KGB出身のプーチンが戦争しているからにはなおさらだ。

ロシアの人々の中には欧米の情報を仕入れて反戦を言い出す人もいるけど、プロパガンダが利いていてプーチン支持も多いということだし、その背景にはソ連崩壊後の経済危機の際に西側が悪いと吹き込まれたという部分もあるようだ。日本だってこの映画で表現される自決の原因として鬼畜米英で洗脳されていたから。

そして、左派知識人にアメリカとロシアの代理戦争と言っている人がいるのだけど、ロシアは共産主義国家では無いし、今回のロシアの侵略を支持しているのは北朝鮮とかシリアとか酷い国ばかりなのでロシアが民主主義国家群全体を敵に廻して戦争をはじめたってところじゃないか。ウクライナは日本みたいにアメリカと密接関係がある国家では無いし。だから、もし代理戦争というならば、ウクライナが民主主義国家群のために代理で犠牲を払っているということになる。辛い結論だけど。負けたら国民は殺されたり、極地に追いやられたりするので抵抗するしかない。

あと、戦争の終わりで余り良い方向性が見えないというのも問題。日本の場合は開戦という愚挙を行った人たちが負けも決断出来たけど、核兵器を持っているプーチンは簡単に負ける余地が無い。少なくともロシア領内は制裁だけで破壊されず、ウクライナ領内で悲惨な出来事が起こっている訳で。

プーチンやその勢力が上手くいって排除出来る時がきたら他人事で無く国のシステムの内部に関わってロシアを真の意味で民主化する必要がある筈だけど、今そこまで射程にいれて喋ってる人がいないのが気になる。歴史が好きな人は多いけど公民を好きな人は少ないみたいな問題。EUは東ヨーロッパを上手く導いて平均収入を上げた面があった訳でアメリカの国力が相対的に弱くなり、アフガンの改善を放棄して宗教勢力であるタリバンに牛耳られてしまうような時代だからこそ、民主主義体制が協力する仕組み作りが求められるのだろう。あと今回の侵攻を冷めた目で見ている強権的な政府が支配している第三世界の国々のことも忘れてはいけない。民主主義が権威主義に勝つためには格差社会ではなく皆の幸せが必要だろう。格差社会を許容する人はその先にあるもっと格差があり人々の自由も奪われ権益の受益者の数も少なくなる権威主義社会がその先に待っていることを意識して欲しい。

戦争は映画になりやすいが、私は戦争の終わらせ方やその後の社会をどう再興するかに興味がある。映画になりにくい話だけど。

(評価:★4)

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