[コメント] 郵便配達は二度ベルを鳴らす(1981/米)
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ジェームズ=M=ケインによる同名小説の四度目の映画化作品。私が知っているのは1942年のヴィスコンティによる『郵便配達は二度ベルを鳴らす』(1942)だけだが、この作品には奥深いメッセージ性があり、ヴィスコンティ嫌いの私にしては、珍しく評価の高かった作品だった。
それで本作だが、雰囲気とキャラクタに関してはヴィスコンティ版よりも上を行ってる。爛れたようなあからさまなセックス描写と、『ファイブ・イージー・ピーセズ』(1970)から抜け出したかのように常に苛ついているニコルソンの姿。その苛つきに感化されたように、場面場面において違った側面を見せるラングの女性らしさ。それら全てが上手く結びついてる。少なくとも、その描写に関しては満点をくれても良い。少なくともニコルソンについては明らかに性格俳優として扱っており、それが成功した作品だろう。
ただ問題は、その描写力に物語が追いついてなかったと言うこと。場面場面は映えるのだが、通して観ると、どうしても物語が散漫。折角濡れ手に粟の幸運を手に掴んだのに、それがあまりにもあっさりし過ぎている上に、罪悪感から来る感情の齟齬もないし、主人公が一体何をしたかったのか、もうちょっとだけ明確にすべきだったんじゃないだろうか?特にこういうピカレスクものだと、主人公の存在感だけでなく、思考性というのも重要になるのに、それがないがしろにされすぎ。それが残念な所。
話題になった性的描写も今となってはそんなに問題あるものじゃなくなってしまったし…結局性描写は諸刃の剣なんだよな。売りが出来ると、以降の作品ではそれを越える描写が出てしまって、たいした過激さに見えなくなってしまう。
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