[コメント] ノイズ(1999/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
‥宇宙人の存在を信じるに足るという意味ではなくって。
とても頼りがいがあり、動じず自分を守ってくれる良い旦那であっても、マタニティブルーに動揺しない旦那を、その違い‥共感の不一致(肉体変化を伴う言外の不安を、進路相談のように共有出来るわけも無いのだろうが)だけで疑い、こうやって妄想と些細な現実とのつじつま合わせによって、それを確信してしまい、妄想の正義で罪悪感もなく殺害までしてしまう。 ‥「これぞ女」と言う映画。
『ティアボロス』にしてもだけど、こういう映画って多いのかな‥。妻を持つ男性には、女性がこういう風に見えるのものなのでしょうか?! これってキリスト教圏特有の女性嫌悪の裏返し?!
それにしても自分がエスパーだという確信があるのか?! 彼女。 自分が空想で見たのと同じ傷を見て、自分の空想を現実だったと思えてしまえるのだから凄い怖い。 あれは自分を救いに来たときに負った傷であるかもしれないのに‥。
したたかに何事も無かったかのようにその後の人生も生きてゆけるのだから彼女は強いですね。ああ、怖い映画でした。
■死にかけた体験■
‥でなくとも、脳に損傷を負えば、誰でも別人的に変わりうる。 例えば感情失禁など比較的軽いダメージでも、理性的にこれまで全く見せず抑えていた行為が表に出ただけの事であっても、例えば、彼の幼少を知らなければ、それは信じがたい行為に見えよう。どんなに立派な旦那でも残酷な幼児期はあったし、負の感情だって芽生えないわけじゃない。
宇宙などに出なくても、ごくありふれた日常にあって、 これは誰にでも起こりうる身近な話だけに怖い。
単に衛星軌道上が宇宙人を連想させやすいという、思いこみのトリガーが軽いだけの違い。妖怪、霊場、思いこめてしまえば何だってアリだ。
死に直面すると生殖本能が発揮されるという話もあるし、 共に妊娠という偶然の一致にしても、その確率は元来大きい。
鞄の事は彼女の夢であるし、彼の「殺したよ」発言も、錯乱した者を宥めるための、偽りの同意だとも解釈でき無くもない。死の危機にある錯乱者だ、何を同意し、何を否定すべきかも滅茶苦茶だ。あらゆる可能性に訴え賭ける彼の気構えとして分からなくもない。
転勤、妊娠、過去の病歴‥。人間関係の変化、夫の仕事内容。 不安を煽る男の来訪。妹の嫉妬、疑念、喧嘩、罪悪感‥。 映像を全て現実の写実としてではなく、部分的にでも妄想や錯覚と読み替えることで、単なるSF映画ではない‥と受け取れる複線もそれと同様に多い。
■「戦場で夫を亡くした后の話」の譬え■ 記憶を消して上書きしただけなんじゃ〜遺伝子的には 夫の子でしょ。どっちにしても。
初めから心の底から旦那の事を信頼などしていなかったのだ‥と解釈してしまうとあんまりに…なので‥、せめて、ふとした弾みで裏返ってしまった不幸と。‥全幅の信頼をしていた故に、その感情が裏返ってしまった時に、逆に信頼を見出すきっかけをも、すべて失ってしまったという悲劇と解釈しておこう。
日常から程々に疑いを持ってさえいれば、視点が逆転しても、信頼を全て失してしまうことも無かったろうに‥と。
作中では妹に言わせているが、彼女も完璧な男性として旦那を見ていた。完璧であるのが彼だ‥と。だから、死の恐怖や恐怖の記憶を封印しようとしている彼の、その弱さを認められなかった。その違和感が、彼女に彼を「別人」と認識させてしまった。
このような作品を観る人には、なるべくでも、
「最後まで信頼を失わずに、せめと自分の場合は信じぬこう」
‥と、心に誓ってもらえたら‥と思う。
自分も含め。
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