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[コメント] 降霊(1999/日)

やはりストレートなホラーではないが、ホラー演出は至極。とは言え、構成に難あり。共感を求めない作りと納得出来ない作りというのは全く別物。黒沢清監督は前者を上手く見せる人だが、これに関しては後者に陥った模様。
HW

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







原作小説『雨の午後の降霊術』や1964年の同名映画版では名声を求める霊媒師の妻が夫を巻き込んで、誘拐を行うというシンプルな筋らしい。なるほど、それを聞くと、この映画の問題点について考え易い。まさしくアレンジ部分にあたる誘拐の言わば「引継ぎ」が少女の行動、気付かない夫、妻の野望、それを止められない夫とバカが4つも重なって起こるものなので、随分無理を感じた。無理な転がりが笑えるような作品でもないので、ストレスが溜まる。散漫な導入のこの映画、本筋らしい本筋はそこから始まるのだが、気持ちがすんなり入って行けず、後から冷静に思い返すと、平凡な夫婦に訪れた思いがけない運命、それは幸福への切符か?破滅の始まりか?というドラマ自体はかなり興味深くさえ感じるが、発端の強引さが拭い切れず、見ている間はどうにも集中し切れなかった。アレンジの方向性は実に意欲的だと思うが、そこから生まれた不備は否めない。

心霊研究にのめり込む大学院生、音響技師、霊媒実験といった諸々の要素が最初興味を引くが、本筋の方向性と満足に絡まないものが多く、良く言えば、監督独自の作風が細々と表れているのだが、前後制作の作品で補完という中途半端の印象も受ける。

しかし、幽霊登場ショットの数々などさすがの敏腕で、どれも古典的風格すら感じさせる見事さ。また、幽霊をボッコボコに撲殺し、ドッペルゲンガーをガソリンで焼き殺すという他の監督では見れそうもないキレっぷりには大感動。霊についてホラーについてある種達観していないと、あんなものは撮れないだろう。

(評価:★3)

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