[コメント] 雄呂血(1925/日)
邦画でここまで明暗法が効果的に取り入れられたのは、この作品が初めてではないでしょうか。
この作品でまず印象を受けるのは、明暗法=キアロスクーロを効果的に取り入れている点ではないでしょうか。映画作品における明暗法の取り込みと言えば、『カビリア』や『チート』など、1910年代の洋画には既に数多く見られるわけですが、邦画だとやはり『雄呂血』を挙げたくなります。特にラストシーン、阪妻が役人たちにしょっぴかれていく姿が陰影的に示されるシーンなどは、実に映画的記憶に満ちています。
そして、もう1つ、この作品の見どころと言えば、終盤における阪妻の殺陣。この立ち回りでは、クレーンによる移動撮影が行われており、大勢の役人・野次馬をカメラの中に上手に納めています。また、時折挿入されるカットバックも冴え渡っていて、その手際の良さには感服させられます。この伝説的な殺陣シーンで以て(旧劇から新劇へという意味に近い)時代劇映画のジャンルが確立されたと言っていいのではないでしょうか。敢えて傲慢に言えば、このシーンを見ずして何が日本人かとさえ言いたいのです(笑)。
ちなみに、当時、マキノ映画では、監督・二川文太郎、脚本・寿々喜多呂九平、主演・阪東妻三郎、というトリオで傑作が生み出されていくわけですが、結局、名声を得たのは阪妻ただ一人。寿々喜多に至っては、阪妻とケンカ別れして以降は泣かず飛ばずで、失意のうちにこの世から去ったわけで、映画界とは恐ろしく無常(無情)な世界です。
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