[コメント] ラスト・ショー(1971/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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ラリー=マクマートリーの小説の映画化。古き良きアメリカが変化を始めた時代を、多感な少年が青年へと変わっていく成長と合わせて描く作品で、このノスタルジーは大いに受け、1972年全米興行成績6位。
こういうノスタルジックな雰囲気の作品の代表としては『アメリカン・グラフィティ』(1973)があるが、これは舞台が1962年だから、本作は更に一世代さかのぼった世代を対象としており、明らかに世代的な狙いがあるものと思われる。
カウボーイが走り回り、自分たちが絶対正義と疑わなかった時代が終わり、国際的な責任の矢面に立ち始めたアメリカという国。そして丁度ビートニクが始まる世代。その混乱こそが本作の肝なのだろう。対する『アメリカン・グラフィティ』は、10年を経て既にそれは自明のものとして受け入れつつ、自分たちの世界に価値観をシフトしてきた世代だとも言える。だから質的にはずいぶん異なっているし、狙いも又異なっていることを感じ取ることが出来る。
それとやっぱり映画館が舞台ってのも良いよね。映画は時代を映す鏡とも言われるが、オープニングの『花嫁の父』(1950)、エンディングの『赤い河』(1948)というのは、なんか切なくなるような気分を感じさせてくれる。
そう言う意味で青春ものを扱った作品としては評価できるのだが、日本人である私の目からすると、その肝であるノスタルジーが全然分からないというのが残念なところ。カウボーイがそれだけもてはやされるのも、当時としては過激であろう性の乱れなども、「こんなものか」で終わってしまう。その時代に生まれてもいないし、その空気を吸ってもいない人間の弱みだ。
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