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[コメント] サイレント・ムービー(1976/米)

バンクロフトにこんな役演らせられるのはブルックス監督だけです。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 奇抜なアイディアと遊び心に溢れたブルックス監督の傑作の一本で、1976年全米興行成績も7位。

 現代に無声映画を作ろうとする監督たちの珍騒動が描かれるのだが、この作品そのものがサイレントで作られており(パントマイマーのマルセル=マルソーが特別出演し、一言「ノン」と言うシーンがあり、実は完全サイレントではないが)。更に主役がブルックス監督自身で、名前まで同じ役をやっているので、まるで撮影が同時に行われているかのような錯覚を覚えさせる。ブルックス監督はメタフィクションが好きなようだが、言ってしまえば本作ほどメタな作品は他にあるまい。

 勿論その発想を活かすだけの演出力あってのことだが、それについては申し分ない。これは一応サイレントという形を作っていながら、後で考えてみると、全員雄弁に喋っていたとしか思えないほど。明らかにこれはブルックス監督の挑戦でもあったはずだ。  何よりここに登場する大スター達の顔ぶれが凄すぎる。しかも、多くは演技派で知られる人で、そう言う人達に馬鹿げたコメディ役を振るなど、普通考えられない(これが日本だったら正月特番などで結構そう言う茶化しは見られるのだが、アメリカの、しかもハリウッドスターは自己のイメージを大切にするために、殊更こう言うのを嫌う)。どれだけブルックス監督が役者達に愛されていたかがよく分かるよ…まあ、バンクロフトにあんな役をやらせられるのは確かにブルックス監督以外にはできないだろうけど、レイノルズにゲイネタやらせたり、ニューマンにレースネタを茶化させたりするとは。いやはや脱帽である。たった一言だけ語るマルソーが本来無言のパントマイマーというのも皮肉だ。

(評価:★5)

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