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[コメント] 土と兵隊(1939/日)

この作品を超える戦争映画を邦画界はいまだ作っていません。戦場における複数の時間軸を丁寧に描写しています。
TM大好き

日本の戦争映画としては、これが最高傑作のようにさえ感じます。陸軍の全面協力により、全編にわたって中国ロケが行われていますが、そのスピーディな戦争描写は、現代の邦画においては真似のできないものではないでしょうか。典型的な国策映画の1つですが、戦意高揚モノとしての要素は薄く(これは当時の国策映画の多くに言えることです)、逆にそこには「戦場のリアリズム」が一貫して追求されています。

そのリアリズムの一端として指摘できるのが、人間同士の戦争という動的な要素と、鳥や植物という静的な要素との対比法的構成です。戦場とは単に戦場ではなく、様々な時間軸の下で、様々な生き物が生息する場でもあるはずです。この映画は、そうしたリアルな戦場を実に巧妙に描いています。このことは、60年後の『シン・レッド・ライン』にも言えると思います。『シン・レッド・ライン』は同時期の戦争映画『プライベート・ライアン』と比較されがちですが、両作品の間にある差異は、戦場における複数の時間軸を重視しているか否かにあると言えるはずです。そういう意味では、『シン・レッド・ライン』を観て、『土と兵隊』のことを想起する人も多かったのではないでしょうか。

(評価:★4)

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