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[コメント] ペパーミント・キャンディー(1999/日=韓国)

水の流れが長い時間をかけて岩を削り、地球の地形を変えてしまうように、時の流れは少しずつ、けれど確実に、一人の人間を容赦なく変えてしまった。
田邉 晴彦

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







人生の岐路における様々な出来事が、人間を形成していく。人間は願ったように生きられない動物なんだと痛感した。

ブックエンド形式(結末を先に持ってきてその後は順にストーリーが進む)と違い、全編を通して時間軸を逆回転させるこの手法。本作の公開当時は結構新しかったのではないかと見受けるがどうなんだろ?最近では『アレックス』(ギャスパー・ノエ監督)『メメント』(クリストファー・ノーラン監督)等、主にサスペンスの要素として導入されるケースが多いかな…。

ちなみに本作では、各章の導入部分として列車のレールを逆回しに映すシーンを挟んでくる。小説には出来ない映画的な表現方法であり、小説家イ・チャンドンから映画監督イ・チャンドンへの変化がそこにはあらわれている、と思う。

個人的に好きか嫌いかで言えば、「あまり好きではない」タイプの作品。鑑賞中(特に序盤)は正直を言えば退屈。その理由は明白で、ソル・ギョング演じるキャラクターが抱える欲求も葛藤も判然としないから。キャラクターにシンパシーが湧いてこない分、序盤で既に作品世界から心が離れてしまう。その後の展開でナイーブな青年像と「光州事件」を始めとする悲劇的な顛末を提示されても、最後まで興味を取り戻すことは出来なかった。

時間軸を逆戻しにする技法を導入しているため、やむなしの効果ではあるが、そこはユーモアをもう少し挟むなりして、その時間軸内でキャラクターを魅力的に仕立て上げてほしい。そうした配慮(というか狙い)はどうやら監督にはないようで、キャラクター原理主義で映画を観ている僕としては、「乗れない」タイプの作品であった。

ただ、ストーリーテリング自体は手堅い。映画を観終わって内容を反芻するうちにその味わいを増してくるので、2回観るとだいぶ評価の異なる作品かも知れない。

(評価:★3)

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