[コメント] ドラえもん のび太の魔界大冒険(1984/日)
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1984年は劇場アニメ作品の傑作が多い。『風の谷のナウシカ』も『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』も『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』もみんなこの年の作品。その中にあってちゃんと個性を出しているところがさすがだ。
これまでの作品と大きく違う本作の特徴は、これがドラえもんの出した“もしもボックス”でのび太が作った世界という点。この中の話だけであるならテレビ作品の一編で終わらせることもできるだろう。しかしそこから一歩踏み出し、その“もしも”の世界が現実と接点を持ったら?という軽いメタフィクションの話になっていること。
お陰でこれまでの作品の中では最も複雑なものとなったのだが、それでちゃんと説得力持たせた物語になっている。意外性とバランスを兼ね揃えた好作と言えよう。
本作で面白いのはのび太の存在価値。現実世界で落ちこぼれののび太は別な世界に変えたら自分も変われると思っていたが、実際に魔法の世界を作ったら、そこでもやっぱり落ちこぼれというオチ。
いかに現実を変えようと、自らの存在価値は変わらないというところから始まって、そこから努力を覚えていくという過程がきちんと描かれている。のび太は決して能力が低いのではなく、努力嫌いの性格と自己肯定感の低さによるもの。それを刺激して正しく伸ばせばちゃんと成長していくというものをしっかり描いてくれた。
これはテレビシリーズでは出来ない事で、劇場版だからこそ描けるのび太の成長をちゃんと描いたところが良いし、多分その意味では本作が劇場版の中で一番上手くいった話となるだろう。
少々設定的に無理があるが、その辺は許容範囲だし、その辺の強引さが原作者の脚本の味だ。同時並行して藤子不二雄によるコミカライズもされているが、ドラえもん映画のノベライズでは唯一読んだ作品でもあった。
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