[コメント] ゴーストワールド(2000/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
ゴースト(幽霊)
幽霊とは実がない状態であり、つまり既存のイメージからすると透明であり、ぷかぷか浮いていて現実感がない、そもそも現実にはいない存在とされている。
ゴーストワールドの中で描かれていた世界において、しっかりとした実を持ち、確固たる自分を持っていた(もしくは持とうとしていた)のはイーニドだけであった。厳密に言うと卒業する前のレベッカと、出会った頃のブシェーミもそうであった。
人は成長する(ここでの成長とは心身の成長とともに社会への適応性を示す)と、かつてあったはずの自己を隠し、偽装された自分を持って社会へと歩んでいく。社会は統一された世間をつくることが目的なので、イーニドのような確固たる自己は邪魔な存在であり、それを排除するかもしくは強制しようとする。
美術のシークエンスはそれを明確に表している場面であり、彼女をなんとかしてこの社会で暮らせるように適応させようとしているシーンである。
結論を言うと、ゴーストワールドとは幽霊が生きている世界、つまり自己を持たない曖昧な存在が世界を作っている状態を指していて、イーニドは無意識的にもその世界に対して対抗し、自己を何とか保とうとしている唯一の存在なのである。あの世界の住人がゴーストであることを明確に示している存在があのヌンチャク男である(つまり意味不明で自分が無く、うろうろしている)。
最後のバスの場面でイーニドは別の世界に行く。果たしてたどり着いた先がゴーストワールドでない保証はどこにもない。しかし彼女は旅立つ。なぜならそれが彼女の自己なのだから。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (1 人) | [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。