[コメント] 11人いる!(1986/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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萩尾望都の傑作漫画の完全アニメ化作品。連載自体は1975年なので、10年越しのアニメ化となった。
この「11人いる!」は、変な思い出がいくつかある。
一つは、この作品に初めて触れたのが、NHKでやっていた「少年ドラマシリーズ」という作品から。
SF好きヒーロー好きの少年だった頃、テレビでの特撮やアニメに夢中になっていた時分だが、私の育った田舎では民放テレビ局が二局しかなく、いつもそう言う作品が観られたわけではなかった。そんな中、確実に観られるSF作品ということで、この「少年ドラマシリーズ」は貴重な作品で、幼心にかなりの番組を覚えている。その中でも不思議な作品として記憶されていて、本作は結構記憶に残ってる
ただ、今ちょっと検索してみたところ、「少年ドラマシリーズ」の中では本作は「最悪の作品」とされていること。脚本が佐々木守であることなどが分かった。
この番組が特に原作ファンに受けが悪いのはよく分かる。なんせ本来の肝であるはずの11人目がドラマ版では変えられていたという事実。これは原作ファンとしては我慢ならないだろう。確かに色々問題あった作品には違いないのだが、私にとって最初の出会いがそこであったというのが不幸だったかもしれん。
その後、原作を読む機会に恵まれたのだが、私が最初に読んだのは、何故か続編の「続・11人いる!」の方。11人目が誰だったかという前提条件が変わっているので、頭がこんぐらがってしまった。まあその後、本編をようやく読んだ時にやっと誤解が解けた訳だが、なるほどそこでテレビ版の問題点ってのが分かってきた。
そんな記憶があって、ちょっとした思い出となっている。
丁度そのあたりの時間軸だったと思うのだが、そこで「11人いる!」がアニメ映画化されることを知った。監督は真下耕一で、キャラクターデザインとかもムッチャクチャ変えられたものがアニメ誌には紹介されていたが、やはり未だに「少年ドラマシリーズ」の悪夢が甦ったからだろうか。内外から徹底的に叩かれ、お蔵入りになってしまった。
結果として監督も変えられ、非常に正統的に、そして非常に無難に作られたものが本作となる。
原作をきっちり映像化すると言うことで定評のある出崎哲が監督ということで、本作はまさしく原作通り、全くいじってない見事な出来だった。実際漫画原作をここまで過不足なしにアニメに落とすなんて、職人技だと思う。
しかし、この作品の不幸は、「だったら漫画でいいじゃん」という一言で済んでしまうということ。漫画が動いて声が付いただけって、本当にアニメにする必要あったの?
原作を変えると怒られ、変えないと面白みがない。
無い物ねだりとしか言えないけど、どうにもしっくり来ないものを感じてしまう。怖いもの見たさで真下版を観てみたかった気はする。
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