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[コメント] シュレック(2001/米)

「アンツ」のリベンジ版としては、出色の出来。なんといっても、ディズニーランドへの皮肉!コンピュータのアンチMSになぞらえて、このアンチディズニー映画を、「ハッキング映画」と認定します。
小山龍介

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







■日のあたらない場所

光あたるところ、必ず影が出来るように、 身分の上下、血の清濁、才能の優劣、 すべての価値基準には、

・評価されるもの ・評価されないもの

の二つを生み出すわけですが、 あくまでこんなもの、相対的なものだし、 ある種の幻想の上に成り立っている。

しかし、ここに経済的な要素が絡んでくると、 とたんにそれらは「権力」となって 強固になってしまうのだけど、

■「バグズライフ」に先駆けてコケタ「アンツ」

CGIアニメーションがおおはやりですが、 ここにもやはり、光と影。 「バグズライフ」の華やかな色彩とは対照的に ドリームワークス+PDIの放ったアニメが 「アンツ」だった。

場面のほとんどが土の中、茶色一色で、 光も差し込んでこない。 主人公のアリは下級労働者で、声がウディアレンと来る。

ああ、なんと夢のない話。 案の定、「バグズライフ」は大ヒットを飛ばし、 「アンツ」は崩れ落ちる巣穴から飛び出すことはなかった。

■リベンジ版「シュレック」

おそらく「モンスターズ・インク」に対抗したのであろう 今回の「シュレック」は、幸運にも ディズニーパクリアニメ第2弾の名高い「アトランティス」の ライバルとして位置付けられることになった。 単にお正月映画というタイミングだけで。

これが、偶然とは思えない面白さなんですよ。 出だしから、シュレックがおならするは、うんこするは、 げっぷするは、やりたい放題なんですが、 その後も物語の王道をしっかりとはずしていく周到さ。

圧巻は、ディズニーランドライクな街の不健康なまでの清潔さ。 このジョークにニヤリとしたなら、あなたも立派な影の住人です。

「アトランティス」がつまらないのは ぴあの読者アンケートに「純粋な心になれましたぁ」という 21歳学生の回答を見るまでもなく分かるわけで、 いよいよ「シュレック」が際立ってくるわけです。

■なぜ王道をはずすのか

知りません。

というか「アンツ」失敗した時点で、普通ならやめるでしょう。 ところが続けてしまう。

なぜ? ヒットしないかもしれないのに。

ハリウッドを「商業主義」と批判するのは 勝手にすればいいことですが、 こうしたアンチ王道の映画を金かけてやるところに、 ちょっとした希望をもってしまう。

おそらく、これはドリームワークスではなく、 PDIのスタッフの強い意向ではないかと想像します。 彼らは、CGI技術に対する強い自負を持っている。 技術に対する自負というのは、 どこかしらコンピュータハッカーのそれを思い出す。

そう、アンチ王道=アンチディズニー=アンチMS が一直線に結ばれたとき、 莫大なお金をどぶに捨てるような表現、 もとい、どぶの理不尽なまでの高品質なCGI表現に、 力そそぐのだろう。とか。 (そういやアンチとアンツは似てる)

ハッキング映画「シュレック」、ほんとに必見です。

(評価:★4)

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