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[コメント] 夢を生きた男/ザ・ベーブ(1992/米)

グッドマンは好演してますが、もうちょっとエキセントリックに行っても良かった。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







その愛嬌ある風貌と驚異の長打力、ここぞと言う時には必ず打つ実力を伴ったファンサービス、そして率直過ぎる言動などで今もなおファンが多い人物である。

 こんな彼だけに、映画界も放っては置かず、1948年に『ベーブ・ルース物語』という作品を作ったが、この作品は極端なまでに事実が歪曲されており、たいして話題になることもなかった。その辺同じヤンキースの選手で玄人好みと言われたルー・ゲーリックの半生を追った『打撃王』(ちなみにベーブは本人役でこの映画に登場している)が傑作と呼ばれるのと大きな違いだった。

 ただ、実際映画として考えると、真面目一辺倒ながら、本気で野球を愛し、家庭生活にも恵まれたゲーリックに対し、少年院出身、酔っては器物破損を繰り返し、好き放題なことをしゃべり女癖が悪いベーブは、昔のハリウッドではなかなかできなかったのは容易に推測が付く(事実『ベーブ・ルース物語』ではその辺はすべてカットされている)。

 しかし、だからこそ90年代になってようやく本当のベーブの伝記映画が出来たことになる。映画の幅がぐんっと増したハリウッドのお家事情もあるし、ありのまま素直に乱暴者を描いても魅力的に見せられるようになったということもある。

 そして実際出来たものは、まさに球界の暴れ者としてのベーブ・ルースだった。素直なベーブの性格は一方では賞賛を受け、一方では攻撃の槍玉。そして空気を読まない発言の数々で、やがて周囲にも世間的にも追いつめられるような、そう言った存在として描かれていた。

 ここで思うのは、ベーブというのは、ある種成長しきれない精神部分があって、それが時にオレサマ発言となり、時に人の言葉に涙を見せたりもする。未成熟な人物として描こうとしていたこと。私も本人は知らないが、確かにこう言った人間というのは時々いるし、そう言う人物に色々迷惑をかけられることも多い。そう言った人物だったのかもしれない。ぐっと身近な存在として受け止めることが出来るだろう。

 そしてベーブを演じたグッドマンも上手いはまり具合。この人はなりが大きいので、画面に登場しているだけでも存在感があるが、意外に細やかな演技も上手く、安心して見ていられる。ただ、そのそつのなさが今回については、ややはまりきれなかった感じもあり。『バートン・フィンク』(1991)の時とまではいかなくとも、もうちょっとエキセントリックな感じに仕上げても良かったんじゃないかな?

(評価:★3)

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