[コメント] ノー・マンズ・ランド(2001/伊=英=ベルギー=仏=スロベニア)
映画を見終った人むけのレビューです。
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マスコミや、中立を気取り「平和」を目指している偽善者の国連への痛烈な批判。戦争の無意味さと、思わず笑ってしまうユーモア。そして、結局人間個人的な怒りで、元は近くに居た人間を殺してしまう。これだけの内容を1時間40分未満に抑えて描ききったのは凄い。しかし、なぜだか中盤あたり少しだれてしまった。それでもマスコミの五月蝿さが画面に強調され始めた辺りから面白くなってきた。この映画は面白いけど面白くない映画だと思う。
コメントにも書いているように、この映画のあらすじを初めて知った時は、同じ民族で同じ言語を話す韓国と北朝鮮の軍事境界線で起こった一つの事件。その裏側にあった真実の友情。戦争が生み出した南北分断という悲劇の中、「戦争が始まったら俺たちも銃を向け合わなければならないのかな?」と苦悩する兵士達の姿を思い出した。
結局どんな戦争でも生み出すのは悲劇と死体の山。しかし、最近はその死体の山にマスコミというハゲタカが群がり、世間の人々に「真実を報道する」と称しながら、結局自らのビジネス、数字、つまり利益のために「真実を報道する」。そして時にその真実はショービジネスのように曲げられる。
さらに、その喧嘩に仲裁として、世間の顔色を窺いながら他民族が他言語を喋りながら介入する。しかし、その仲裁も「個人が望む平和」ではなく、結局マスコミと同じく偽善者を気取り、口先だけの義務を叫ぶ組織(国連)が「世界が望む」平和のために介入する。だから、マスコミに脅されて初めて重い腰を上げて行動に出る。いくらその組織の中で個人が叫んでも世間体、自らを第一に考える上司により引き戻される。
何よりも、その国の主要言語すら喋れず、自国の言葉と英語しか喋る事の出来ない人員を送り込む始末。これほど頼りにならないhelpはあるだろうか?何も考えずに見せ掛けだけの行動。もし、塹壕に居る人間が英語を理解する事ができなかったら、なんて考えていない、ただ世間体ばかりに目を向ける。周りばかり、いや、自らの利益が気になって何もできない国連。そして利益=数字が欲しいから「真実を伝える」マスコミ。
塹壕の中で銃で脅しながら「お前達が先に戦争を引き起こした」と無理矢理戦争の責任を相手のせいにする愚かさ。そしてラストで殺した理由は単純な個人的な恨み。殺戮は誰が生むのでもなく、結局は人間。もっと言うなら人間の中の感情。少し前まで仲良く懐かしい話題に花を咲かせていたとしても、その後怒りに身を任せて人を殺す。戦争って結局最初は人間の愚かな部分から始まる。そして、人を殺す人間を人を殺す事でしか止められない人間。何人の偉い人間が集まろうと、結果的に人一人助ける事の出来ない人間。
「これで終わり」という終わり方になぜか、衝撃よりも不安を感じた。監督は答えを出さず観客に委ねたのではなく、答えが出せなかったのではないかと、なぜか思ってしまった。
戦争という行為自体は悪ではるが、結局それは人間がしている事。今レビュー書いてる俺も、テレビの前でマスコミが報じる「正義の国連」を見ている俺も、飯食ってクソしてる俺も、戦争する事ができる。人を殺す事は簡単。しかし救う事は難しい。戦争という行為自体を批判する事は誰にでもできる。最近の国際情勢を見て、クラスの女子が「アメリカはどうしてあんなに戦争をしたがるのだろうか?」と書いていた。今の世の中大体の国では「反戦」を叫んでいる。
「戦争」という物は悪い事で、生み出すのは悲劇ばかりだから批判する事は容易い。しかし、彼らはその戦争を誰が生んだのか分かっているのか?その戦争が生まれる前に何があったのかわかっているのか?
歴史的な経緯なんて問題外。結局戦争は人間が起こしたんだ。戦争って結局国家の上に居る人間の「怒り」に国民が影響されて、国家総動員して「切れて」相手国をぶっ壊す行為だろ?人間が居る限り戦争は無くならないと思う。今の世の中世界中で反戦ムードで色々な所で「戦争反対」を叫んでいるけど、こいつら何がやりたい?戦争って無くならないと思う。その陰に人間が居るんだから絶対になくならないと思う。
だから、この監督も答えを観客に委ねたんじゃないかな?この映画はそんな不安を表していると思う。口先だけの戦争反対なんて見せられても、どーでもいい。むしろ俺は、軽軽しく戦争反対を叫びまわる人間を見ていると不安になる。
今の世の中、社会に向って反戦を叫んで可愛そうな子供達を放送すれば数字が取れると思っているマスコミばかりだと思う。さらにそれを見て同情して口先だけの反戦を訴えるのが人間だと思う。実際に理不尽な戦争の中にいる人間たちはそんな綺麗事は望んでないと思う。世の中綺麗事を言えば偉い人。人間の愚かさなんて見向きもせずに社会的に「悪」と見なされる「行動」だけを批判し、根本を見つめようとしない、我々。
そんな人間を見ていると不安になる。戦争はなくならない、人間が居るから。口先だけの綺麗事を並べた批判はできても、戦争を真に批判する事なんて俺たち人間にはできないんじゃないかな?
結局最近の「戦争反対」訴えてる人もそんな風に世間に流されて、上辺だけの奇麗事を並べただけで、「戦争」という行為の悪を批判して根源を見つめ切れていないんじゃないかな?俺としては別に戦争を肯定しているわけじゃないし、否定しているわけじゃない。けど、戦争を単純に否定はしたくないし、人間には出来ないと思う。だから、この映画の中の国連やマスコミ(もしくはそのマスコミによって流されたニュースを見る人々)みたいな連中ばかりが平和を叫んでいると本当に不安。
まぁ結局そういう映画とは違うんだろうけど(^^;この映画は戦争の愚かさの方がメインなんだろうから・・・。
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