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[コメント] OUT(2002/日)

「あれなんだっけ?主婦が4人でバラバラ殺人する奴・・・」 2002年10月10日試写会鑑賞
ねこすけ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







という感じなんだろうか。

この映画のイメージは「主婦4人がバラバラ殺人を犯す」という内容だった。しかし蓋を開けてみると殺人してしまい、そして仕方なく引き受け、たまたま居合わせ・・・最初は「仕方なく」や「金」が目当てでやっていたその「作業」が少しずつ友情へと、そして自分の新しい人生へと歩いていく話だった。

ドラマも、劇も勿論原作も全く読んだことなかった。あった知識は上に書いた「主婦・・・」だけ。

結構サイコな話かと思っていたら、随所に光るブラックなユーモアと、主婦らしい会話(賞味期限がどうのこうのとか)が、ほほえましい。

しかし彼女達がやっているのは紛れも無く犯罪。しかもバラバラに解体するシーンまである始末。

それなのにほとんど惨酷に見せない監督の手腕は見事かもしれない。予告を初めて見たとき、この映画の音楽のハリウッドの一級サスペンスっぽい音楽を起用していたのも、かっこよくてミステリアスかつ重苦しい雰囲気が出ていていい音楽だった。

しかし問題は話の流れにある。

どれだけ出演者達の演技が達者で、音楽が良くても、これじゃぁ。確かに会話の表現とかは面白い。

師匠と痴呆の義母の会話も『折り梅』のような「現実」を直視したものでなく、少しユーモラスに描いていて、こちらの方が罪悪感が無くさらりと見れる。

物語は冒頭からの絞殺シーンから解体作業へと続く。そこまではよかった。カラスがゴミ袋を破り死体が公になり、警察は佐竹を睨み捜査を続けている。

いつばれるか!?決して緊張感があるわけではない(シャネル女と妊婦の二人が全てをぶち壊している)。

しかしそこまでなら、実に面白く後半の展開に期待される。案の定シャネル女は喋って絶対絶命になる。そして街金融の男から「ビジネス」を受ける・・・・

このときにこの話の均衡は一気に落ち、話の流れが180度とは言わなくても、90度ほど変わってしまっていた。

何か『パルプ・フィクション』のウルフを呼び出したくなるような、彼女達の「仕事」が始まるのだ。

ここで全てが終わった。「殺人はどこへ行ったの?」とばかりに「金」「金」「金」の話になる。

そして極めつけはうざったいシャネル女と、陰の薄い妊婦女。

師匠と主演の人の二人の役柄は滅茶苦茶いいのに、奴らがなにもかもをぶち壊している。

そして話は佐竹の逆襲となる。かんぺーちゃんの切れた演技はそれなりによしとしよう。

師匠が家に火をつけ、雅子が家から出て行く姿はよしとしよう。それについていくシャネルと妊婦もよしとしよう。

しかし緊張感が無い。まぁ緊張感を狙った話ではないとは思うが、いくらなんでも。

しかも妊婦も家庭内暴力に嘆く妻に見えず、絞殺に至るまでのエピソードが「腹の子を蹴られた」瞬間しか見せられないので説得力にかける。

そして一番嫌いなラスト。

中盤で仕事前に雅子と師匠が二人で車から降りて自動販売機の前で会話するシーンがある。

まず序盤で師匠が義母を介護している姿が始めてスクリーンに映し出されたその後ろにあった「オーロラフェスティバル」が伏線になっていた。

その会話の中に師匠が夢を語る。「オーロラを見たい」と。そして雅子には「何にもない。」

このシーンが一番好きだ。極限状態の中の寂しい夢。

そしてラスト。オーロラを観に行った雅子とシャネル。ヒッチハイクでトラックに乗ってTHE END。空にはオーロラ。

雅子はなぜ北海道に行った?自分では「行き当たりバッタリに何もなし」と言い聞かせ、二人にもそう言い聞かせていたが、恐らく師匠と二人で話した夢を観に行くつもりだったはずだ。

それだけ印象深い余韻を残すラストなのになぜオーロラを見ずに終わる?

まぁそれなりに面白かったからいいんだけど。。。あぁ、また無駄に長いレビューになっちまった

(評価:★3)

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