映画館にひとりで、泣きたいほどの憧れを掻き立てられた13歳の俺では、もはやない。主人公の2人に感情移入は出来なくなっていた。

では？ そう、なによりも、すばらしいのは空賊の頭領・ドーラである。

歯が抜けていようが、ド頭に煉瓦を食らおうが、欲望を燃やし続け「すごい！ 欲しい！」と絶叫するこの老人に俺は多くを学ぶ。欲望すること、好奇心、在常戦場の心得……。大人とは、斯くあるべきだと28歳の俺は思ったのだった。