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[コメント] 仮面ライダー龍騎 EPISODE FINAL(2002/日)

前半は結構良かった。だけどテレビでやっておくべき物語を映画にシフトしてしまったのが失敗要因。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 本作は極めてユニークなものに仕上がっている。

 なんせ、テレビ放映は半ばなのに、本作では先行して最終回をやってしまおうというのだ。ずいぶんとぶっ飛んだことをやってくれたものだ。

 テレビ版と合わせて物語の構造を考えてみよう。

 まず本作はテレビ版の最後半。ライダーバトルのタイムリミットが迫っている。本来ここでライダーは残り二人になっていなければならないのだが、この時点で生き残っているライダーがまだ6人もいる(何故か劇場版ではラスボスであるオーディンの存在が抜けている)。そこでリミットまでに全ての決着をつけるように指令されたライダーたちの戦いが展開していくことになる。

 この時点でTVと映画では話が分かれ、TVでは何らかの形で身を引くことになった二人のライダーが映画では生き残り、主人公格の4人のライダーに関わっていくことになる。ただし、基本的に物語に関わってくるのは初の女性ライダーとなったファム一人。もう一人のリュウガは、いわばオチを付けるために登場しただけ。そんな彼女を中心として物語は展開していく。彼女がライダーになったのは、ただ浅倉に対する復讐であり、その復讐が出来さえすれば、それで目的は完遂する。その望みが叶えられるまでが前半の見所で、少なくともそこまでは完全に彼女の存在が主役を食ってしまってる。むしろ本作の前半に関しては、初の女性であり、初の主役を張ったライダーとして特記できる出来といえよう。

 ただ、彼女の死と共に物語は本来の主人公である真司にシフトする。ここでリュウガという、最後のライダーが実は信司自身であったという話に入っていく。本来ならばここからが物語が盛り上げるべきターニングポイントなのだが、逆にそこから急に精細を欠いてしまった。

 思うに、リュウガというライダーは本来テレビシリーズに登場させるはずのキャラだったのでは無かろうか?これは主人公のアイデンティティの裏返しのキャラであり、テレビ本編では、「全てのライダーを守る」という自ら課した制約のために、あんまり強くなかった龍騎というキャラの本当の強さを見せるために登場させるべきキャラだったから。テレビでたっぷり時間を使って登場させ、5話以上使って真司がそれを超えるまでを描いてほしかった。こんな短い時間で出してしまったために魅力を充分に伝えることが出来ず、残念なキャラになってしまった感じ。

 その消化不良が最後に出てしまったか、終わり方もなし崩し的で、どうにももやもやした感情が残る。どうせならファムこそ全編にわたって主役に持っていくか、リュウガの話を最初から最後までやっていれば本作の完成度は相当に上がったと思うのだが…名作に化ける要素を多分に持っていながらそれを生かせなかったことが残念な作品。

(評価:★3)

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