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[コメント] 続・激突! カージャック(1974/米)

この邦題考えた人間のセンスを疑います。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 1969年に実際に起こったという事件を元に、当時新人監督だったスピルバーグがまとめ上げた劇場用長編作。

 邦題に『』と付くので、てっきり『激突』(1972)のリメイクか、あるいはカー・アクション作品だろうと高をくくって観始めて驚いた。

 『激突』とは全く違ってるし、何よりもこれは無茶苦茶面白い。これを「続」と付けたのは絶対失敗。後年の『ナチュラル・ボーン・キラーズ』(1994)に通じるものがあるが、こっちの方が私には遙かに面白く感じた。

 当時既に衰退し始めたニューシネマの良さと、先の『激突』で培ったキレのある演出、そしてこれまで無かったタイプのストーリー運びを押し出し、紛れもない、アメリカ映画史に残る作品だと言いたい。

 本作は実話を元にしているとはいえ、題材の取り方が面白く、それに合わせたキャラの演出方法が際だっている。今でこそ有名になったが、当時は定義づけがまだ出来てなかったストックホルムシンドロームの演出までしっかりなされていたのが凄い(ストックホルムシンドロームとは、孤立状態に陥った際、人質が犯人を好きになってしまうと言う現象で、心理学的に言えば、生存確率を上げるため、無意識に起こってしまう人間の生理的な反応。調べてみたら、ストックホルムシンドロームとは、この映画が上映される一年前にスウェーデンのストックホルムで起こった事件が元だそうだ。その事を知っていたんだろうか?)。最初怯えるだけだったマックスウェル巡査が、やがて自分を人質に取ってる二人を心から祝福しているのが物語の過程を通じて描かれているのが巧い。対する主人公ホーンも最初おたおたするだけの役なのに、だんだんふてぶてしさを感じさせられるようになり、最後は本当に母親の顔をしてる。複雑な役を巧くこなしていたよ。

 それと、本作はニューシネマの雰囲気を大切にするだけじゃなく、カメラアングルも凝りまくり。まだ若い時代のスピルバーグだからこその野心的なアングルだった。車のボンネットとルームミラーで二つの場面を同時に映すあたりの描写は思わず「見事」と声を漏らすほど。

 それにしても返す返す残念なのはこの邦題。これではカー・アクションを期待してしまうんだが、内容はそんな言葉ではくくれないほど複雑なものなんだから。正直、この邦題を考え出した人は反省して欲しい。

(評価:★4)

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