[コメント] タンポポ(1985/日)
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『お葬式』(1984)に続いての伊丹監督第2作。評論家受けした一作目とは違い、総じて評論家の受けは良くなかったが、興行的には成功した。
実際、この作品私はとても気に入ってる。元より食べるシーンのある映画、殊に庶民的な食べ物を食べるシーンって大好きだし、ここに出てくる食事ってほとんどが庶民的なものばかり。
メインストーリーは狙って和製西部劇って感じで仕上げられてる。山崎努のカウボーイハット姿が妙にはまってるし、オープニングでの銃の代わりにナルトを使うシーンなんかは実に良く練り込まれている。『お葬式』に見られた嫌味なほどのカメラワークはここでも健在で、メインストーリーは一々カメラのケレン味に溢れているのが嬉しい。設定などは映研レベルだから、これは映像を志す人の教科書として使うことも可能だ。それにメインのラーメンは言うに及ばず、オムライスやチャーハンなど一々出てくる食べ物が美味そうなんだよな。この表現が出来ただけでも大満足。
メインストーリーだけでなく、サブストーリーも様々な食に関わるショートストーリーがポンポン出てくるので楽しいし、特に誇張された物語が連発されて笑える。がっついて飯喰うシーンもあり、食べられないことに対する飢餓感もあり、食通ぶった人間がへこまされるのもあり。微妙な匙加減が泣かせる。
そして何より評価したいのはラストシーンに赤ちゃんがおっぱい飲むシーンを延々と映し出したこと。いくら食のことを言ってみても、人の原点とはそこに他ならない。全てを圧倒するシーンがそこにはあった。
いろんな意味で本作は興味深い作品。邦画で観ておくべき作品を問われたら、これも一本入れておきたい。
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