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[コメント] ブラック・セプテンバー 五輪テロの真実(2000/スイス=独=英)

この問いに対する答えは国際的には未だ出ていない。
甘崎庵

 ブラック・セプテンバーと言えば、映画『ブラック・サンデー』でも言及されていたが、実在の国際テロ組織。これはとても興味深い作品だった。

 ミュンヘンオリンピックと言えば、ヒトラーの宣伝ともなった忌まわしい記憶を持つ1936年の“ベルリンオリンピック”のネガティヴなイメージを覆すべく(リーフェンシュタイン監督による『民族の祭典』、『美の祭典』はこの模様を映像化したもの)、満を持して西ドイツ(当時)が招致したオリンピックだったはずだ。

 この映画を観て分かったのは、当時の西ドイツというのは、まだ戦争の痛手を引きずっていたと言うこと。具体的に言えば、国内での武装は著しく制限されており、カウンター・テロ対策が全くなされていなかった。ブラック・セプテンバーがそれを熟知していたからこそ、可能だった襲撃事件だった。

 彼らはイスラエルという国が建国されて以来、国際社会からも忘れ去られていたパレスティナ人からなる組織であり、“俺たちがここにいる”と言うことを国際社会にアピールするために行われたものらしい。事実として、これ以降、パレスティナを単なるテロ団体としてではなく、一つの国、一つの民族として見る風潮が強まったのは事実だから、彼らの目的は充分すぎるほどに達せられたとも言える。

 テロによって同情を惹くと言うのは、多分20世紀後半の最も忌まわしい歴史の一つだろうが、それが一番効果的に用いられたのがこの出来事だった訳だ。  “テロはいけない”と言うのは簡単だ。だが、そうすることによってしか自分たちの存在をアピールすることが出来ない者達もいた。そこまで、ギリギリまで追い込まれた人間がいたと言うこと。いや、2001'9'11のアメリカで起きた連続爆破テロを見ても分かる通り、それは今でも起こり続けている。 

(評価:★4)

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