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[コメント] リアリズムの宿(2003/日)

この旅の描写も凄いリアリズム。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 つげ義春の「会津の釣り宿」と「リアリズムの宿」の二本の短編漫画を併せて映画化した作品。両作品とも私は未読なのだが、雰囲気としては確かにつげ義春風に上手くまとまってる。

 つげ作品の面白さは微妙な人間関係にある。生きることが下手な人間同士の交流が描かれている点が、まるで自分自身を見させられるようで、身につまされると同時に妙なリアリティを持って迫ってくる。著者自身がそう言う生き方しか出来ない人間で、それを表現する手段を持ってるからこそ天才と言われる。

 ここでもそれはしっかり映像化されている。特に内気な男二人が旅をすると、互いに決断を任せ合い、それでぶちぶち文句を言うなんて事は旅してると実際にありがちなこと。しかし、人間同士の繋がりって、実際にこういう事から始まるんだし、旅を通してそれまで何とも思ってなかった人と心情的に近づく事も実際に経験したことがある(実際はそれが鬱陶しいから一人旅が多かったんだけど)。ここでの主人公二人はまさにこれだなあ。と思えてしまう…それが身につまされてしまうんだけどね。

 それと、やっぱり女性の強さ。これも著者の漫画には共通してる。その人間観察が上手い。

 物語は淡々と流れ、人間関係も微妙なまま。だけどそれがなんとも心地良い。一方、自分自身の悪い面を見せられてるみたいで、なんか落ち着かない気分にさせられてしまう。結果的に、複雑な思いを持ちながらそれでもほわほわした気分で観ることが出来た。それが一番の収穫。

(評価:★3)

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