[コメント] ウィッカーマン(2006/米)
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カルト映画の傑作『ウィッカーマン』(1973)のリメイク作。本作公開を潮に発売されたオリジナル版を観た後にDVDで鑑賞。
一応本作は作られて良かったとは思ってる。こうでもしないとオリジナル版が再び日の目を浴びることは無かっただろうし、本作を機会に良い作品を観させてもらった。
しかし、それ以上のものを本作に求めるのは無理というもの。そもそも本作の場合、設定と雰囲気はともかくとして、物語と演出が悪い冗談にしかなってない。
オリジナル版から変えた設定など、色々考えられてるし、前提としては決して悪くはないのだ。ただ、それを料理するには脚本があまりにお粗末。それに主人公がはまり役だとお粗末な脚本でも説得力を持たせることができるものだが、ケイジが浮きまくってるのが問題。ケイジの魅力を徹底的にスポイルし、素人が演技してるとしか見させない演出は最低だ。脚本と監督のかみ合いの悪さがキャラにまで及んでしまったひどく悪い例ともいえるだろう。
設定的には興味を覚えるところも結構ある。オリジナル版と異なる部分だが、本作の舞台は徹底した女系社会であり、男は種を残すことと生け贄に捧げられる以外の役割を持たない。と言うのはオカルトとしての設定はそれだけで充分面白いものだし、それをミツバチに例える描写も良い。この島の女性にとってはそれが男に求めるすべてであり、そこから一切ぶれてないという乾いた描写も良い。この作品で愛だとか家族の絆とか出されても陳腐なものだし、それを最後まで信じる主人公の空回りぶりこそが本作の最大の見所となってるのも確か。たとえそれが先に書いた『ウィッカーマン』の最大の設定的見所である“童貞力”を外して尚魅力を持ったものだった。
ところが、事ある毎にそれを持ち出していながら、単に言葉に止まり、奥行きを感じさせることがない。肝心な物語にしても、本当に“単に”退屈なだけで、その退屈さの中に何も感じさせてくれない。
そしてクライマックスは何といってもラスト前の逃亡シーンだろう。古くから続く儀式と言う設定なのに、重要なところでかわいらしい熊の着ぐるみが登場し、ケイジがそれ着て大立ち回りをしてるところなんか、冗談通り越して底冷えがするクソぶりを見せつけている。もはやこれ一本の映画として評価する事自体を否定してる感じだ。
ただ、幸いなことに、この作品はオリジナルを貶めはしてないし、本作のお陰でオリジナル版の良さもちゃんと理解できた。そこは評価しても良いかもしれない。
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