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[コメント] ホームレス中学生(2008/日)

テレビドラマにしかならない素材を頑張って映画にしたのは分かるけど、やっぱりテレビドラマの延長にしかなってなかった。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 原作自体は結構面白かった。過激なタイトルの割に、実際にホームレス状態にあったのはそう長くなく、人の好意によって生きてこられたという事を淡々と綴っていたのだが、それが妙なリアリティを持っていた。

 お笑い芸人は身を削った芸をすると言うが、この本の場合は受けを取ろうとしていないようで、淡々と自分の身に起こった事を綴り、その中で“家族とは何?”と言う問題を自分なりに考えていこうとしている姿勢が面白かった。言っちゃ悪いが、テーマ自体は中学生の作文レベルで、結論は付けられておらず、今も考え中というところで終わってるけど、上から目線にならず、それでも真っ直ぐに難しいテーマに向かっていこうというところが新鮮な感慨を持たせてくれる。

 で、その映画化ではあるが、まあこれは失敗作と言ってしまって良かろう。

 原作が非常に淡々としているので、映画ではいくつかの出来事を拡大する事でドラマティックにしようとした。それは分かるのだが、原作の持つ良さはドラマ性にあったわけじゃ無いので、その良さをことごとく潰してしまう結果となった。

 “家族って何?”というテーマから離れ、お手軽な感動を提供するようなものに仕上がってしまった。テレビドラマならまだこれも許せるレベルだけど、金出して(出してないけど)観る作品のレベルとしてはチープすぎ。

 それと“家族”という結論が出ない大テーマを扱っているはずなのに、後半になるに連れモノローグがいつの間にか真理を語るようなものになってしまっていて、そこが完全に引く。

 この作品を作る場合、お手軽な感動ものにしてしまうのではなく、社会派的な要素をしっかり取り入れてこそ本来の映画作りに出来たんじゃないかな?そこを掘り下げるのは難しいかも知れないけど、映画の持つ力ってものをもっと作り手は信じて欲しかった。

 キャラに関しては、あの田村裕役に小池徹平はいくらなんでもないだろう?というレベルだが、脇を固めるベテラン陣のさりげないフォローが巧く、その辺はしっかり見させてくれていた。役者に実力があるからこそ、この程度の物語にして欲しくはなかったってのが正直な感想。

(評価:★2)

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