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[コメント] キャピタリズム マネーは踊る(2009/米)

なんだかムーアの力の無さが気になって仕方ありませんでした。この人はいつも元気でいて欲しい。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 デビュー作『ロジャー&ミー』以来、自ら行った突撃取材を題材としたドキュメンタリーを作り続けているムーア監督が、今度は2008年に起きたアメリカ金融危機を題材に作り上げた作品。

 これは確かに面白い。監督の原点ともいえる『ロジャー&ミー』の時に一旦戻り、自分自身の家庭に起こったことと、アメリカに起こっていることを直結させ、下からの目線で政治を斬る。大変分かりやすいし、それでこれから市民がなすべき事をしっかりと伝えていく。極めてシンプルながら、シンプル故の説得力に溢れた作品となっている。

 映画ファンにとっても、数々の映画からの引用もあって、そう言う小ネタの数々でも楽しめる作品に仕上がっている。

 ただ、面白いのだが、観ているうちにだんだんと痛々しさを感じてしまった。

 なんだろう。この寂しさは。

 それは、映画に登場するムーア監督が、妙に疲れてしまって見える事が大きな理由だろう。これまでアメリカ政府に対してあれだけ攻撃的だったムーアが、今度は「俺には理解できない」と言いつつ、淡々と事実を述べていく。ピケを張ったりもしてるけど、それもポーズっぽく、最後には「俺一人じゃ無理だ」とまでつぶやく。

 それで分かったのだが、私がムーア監督に求めていたのは、どんなに偏っていたとしても、「自分の主張こそが正しい」と言って、ガンガン突っ込んでいく姿だったのだ。たぶん私が見たかった姿は、ドン・キホーテであることを自覚しながら、それを演じている姿だったように思える。

 そんな姿を見たかったのに、ここで自信のない姿を見せられてしまい、少々物足りなかった…と言うか、自分を役者として見せようとして欲しかった。それが出来る人なんだから。下手に良識ぶったコメンタリーでも、批評家でもなく、理不尽でも良いから怒りをどこかに本気でぶつけて欲しかった。その姿を観たくて劇場に行ったのに。

(評価:★3)

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