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[コメント] スーサイド・スクワッド(2016/米)

色々理屈を言ったが、私にとってこの作品で言えることは一つ。「ジョーカー最高!」と言う事になるかも?
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 ところがこれまでの正統な企画がことごとく外れた上で投入された本作は、逆に正統派の作品よりもかえって受けてしまった。

 本末転倒とも言えるのだが、これにはちゃんとした理由付けは出来る。

 これまで正統派として作られた作品はどうにも作品自体が歯がゆすぎたのだ。

 正統派の物語を作るにあたって前提とされたのは、ヒーロー像を崩すことなく、文学的に仕上げたらどうか?というものだったと推測される。それは確かにフォーマルな選択肢だったとは思うのだが、残念ながら今の映画ではそれはちょっと合わない。本音言わせてもらえれば、当たり前のヒーロー作品なんて既に食傷なのだ。

 そんな時に投入されたのが本作。

 悪役が活躍するという本作の設定は、まさしくお祭り騒ぎにはぴったりの素材であり、どれだけぶっ飛べるのか?というコンセプトはこれまでのDCには無かった新境地を作り上げてくれていたわけである。

 その結果として、「あ、なんだ。DCもやるじゃん」というレベルまでには到達できた。お陰で久々のスマッシュヒットを放つことが出来た。ようやくこれでDC側もこれまでの作り方の間違いに気が付いたかも知れない。

 それでは本作ならではの魅力を考えてみたい。

 基本的に本作は悪人ばかりが出てくるため、自分の欲望に忠実に動く者ばかり。爆弾積んで無理矢理言う事を聞かせているものの、隙あれば逃げようとするし、面倒くさいことはしようとしない。僅かに残る正義感も長続きはしない。

 そんな奴らが、ストーリーを進めていくに連れてそれでも仲間意識を持つようになり、お互いをフォローし合えるようになっていくという構成が結構良かった。単純かも知れないけど、こう言う成長過程を通じてこれまでのDCには無かった「燃える展開」ってのが本作にはあったことが一番重要だろう。だからその点に関してはとても良かった。

 そしてキャラも個性溢れててなかなか魅力的。一応本作はそれなりにまともなウィル・スミスのデッドショットになるんだろうけど、遥かにぶっ飛んでるハーレイ・クインの方が遥かに魅力的だし、それぞれに暗い過去を持ち、それを行動のモチベーションとしている面々の個性も良し。

 更に言わせてもらうと、本作では何といってもレト演じるジョーカーが魅力的。これまでの映画版ジョーカーとは全く違ったキャラ作りとなっているのだが、実はこの私が思い描いていたジョーカーとは、まさにこう言うキャラだった。

 ジョーカーとはどういう人物なのか。それは一人一人解釈は違っているだろうけど、私の考えるジョーカー像というのがこれである。超天才で何でも出来てしまう上に悪魔に魅入られたレベルで超絶に運がいい人間である。こう言う人物は人生にとにかく退屈してしまう。何をしても上手く行ってしまうために金はいくらでも入ってくるし、更に努力が必要ないから、生き甲斐を持てない。だから常に自分の命を的に遊び続ける。どんなことをしても強運で生き残ってしまうが、だからいつ死んでも構わないという思いになって死にそうな遊びをする。本作でハーレイ・クインを助け出そうとしてるのも、恋人だから助けようというのよりも、死を前にすることが最高のスリルだからという理由に過ぎない。  自ら進んで最高にイカれた存在になってしまうというのがジョーカーである。本作では描かれてないが、そんなジョーカーだからこそ、バットマンに執着する。どんなことをしても自分よりも上手く行く人間がいる。それだけで凄まじいエキサイト感であろう。こいつを越えるにはどうすればいいか。それを考えた時に、初めて努力することが出来た。ジョーカーにとってバットマンはライバルよりも、自分を救ってくれた恩人なのだ。だからバットマンを愛する。そして絶対に殺してやると誓える。歪みきってるけど、最も純粋な愛をバットマンに注ぎ込むのがジョーカーの生き方。

 まさしくそんなジョーカーが見られたというだけで、本作はとても好ましい。

(評価:★4)

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