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[コメント] 隊長ブーリバ(1962/米)

歴史劇としては興味深いのだが、なんせ退屈。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 史実を元に描かれる歴史活劇。

 この物語を理解するには、ある程度歴史を知っていないといけない。特に宗教関係の分布図が頭に入ってないと背景が全く分からない。

 ここに登場するのは三つの宗教となる。一つはオープニング部でのオスマン帝国。ここはイスラム教。一方、主人公ブーリバが属するのは正教会であり、ポーランド王国はカトリックとなる。正教会とカトリックは同じキリスト教だが、過去ローマ帝国の分裂と共に分かれた教会同士で、いがみ合っている状況。

 そして歴史として、ヨーロッパは当時東側が強大なオスマン帝国との戦争が続いていた。15世紀にはついに東ローマ帝国を滅ぼした帝国は、その版図をヨーロッパに伸ばそうとしていた時代である。

 その中でのポーランドでの戦いを描くのが本作となる。

 オープニング部分は構図としては連合キリスト教対イスラム教という分かりやすい形になる。ここまでは単純だが、以降はかねり複雑になってここには更に東方正教会とカトリックの問題が入ってくる。

 カトリック国のポーランドはイスラムに対抗するべく他のいくつもの国に救援を頼むのだが、同じカトリック国はどこも軍を送ることが出来ず、正教会国であるロシアに頼む。そこが始まりとなるのだが、同じキリスト教国でも、否、同じキリスト教国だからこそ、些細な違いが許容出来ずにいがみ合うことになる。

 いわばお互いがお互いを嫌い合ってるが、強大な敵の前に手を組むことから話が始まっている。

 だがその脅威が去ったときどうなるか。

 お互い嫌い合ってる者同士が妥協出来なかったらどうなるのか。歴史に数多く存在する人類の歴史の一つの側面を描いた。

 寛容性を持たぬ国が一体どのような末路を辿るか。そしてその残酷な歴史だからこそ、その中にある人間の物語が見応えあるものとなる。歴史の検証だけでなく、人のあり方そのものを問うた作品とも言えるだろう。

 ただ、ちょっと残念なのがこの作品、演出が今ひとつ良くなくて、ダレ場ばかりで退屈なばかりな感じ。だらだら続くので、物語を早く進めろという気になってしまうのが最大の問題。物語も設定もキャラクタも良いのに、演出で損してる。勿体ない作品である。

(評価:★3)

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