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[コメント] ダウン・バイ・ロー(1986/独=米)

「この点が面白い」と指摘するのは難しいが、強いて言えばとても良い空気感の作品と言うべきだろうか?
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 物語として、取り立てて何があるという訳ではなく、不思議な三人組が、ただなんとなく一緒になって、なんとなく共同生活をして、のんびりしてるだけの話としか言いようがない。

 ストーリーらしいものとしては最初の刑務所からの脱走があるのだが、これすら盛り上がらない。気がついたら受刑者の三人が刑務所の入口から出られて、そのままなんとなく一緒に行動してる。彼らの行動パターンは、別段刑務所に戻っても構わないけど、なんとなく外の方が良いからとか言うレベル。

 この辺りで現実から遊離したようなほんわかした雰囲気に引き込まれ、気がつくとこの雰囲気に浸っていることがとても心地よく感じるようになる。夢の中の出来事を描いているようでもあり、奇妙な癒やしを感じる作品でもある。軽く調子外れだがほんわかした音楽とか、ずれた会話とか、何があっても動じないキャラの魅力とか、とにかく空気感がとても良い。

 それで改めてジャームッシュ監督の魅力というものを考えてみると、どの映画を作っても、どこか現実とは遊離した世界観というのがあるだろう。それは例えば出世作の『ストレンジャー・ザン・パラダイス』の居心地悪さだったり、本作のような癒やしの空間であったりもする訳だが、現実に近づくと苛つきが増し、現実から離れると癒やしの空間に近づいていくとは言えると思う。現実世界と夢の世界の距離感をどこに取るかで作品の癒やし度が変化する。

(評価:★4)

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