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[コメント] われ幻の魚を見たり(1950/日)

人が増えると言う事は、生態系を破壊すると言うことでもある。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 現在ヒメマスの放流地として大変有名になった十和田湖に、初めてヒメマス養殖を始めたという和井内貞行の伝記(国語の教科書にも載った、当時とても有名な人物)を完全映画化。伊藤監督は本作を長年暖めており、大河内傳次郎を擁しての満を持しての投入。名作と言われる作品を作り上げた。

 和井内貞行は実在の人物ではあるが、その業績だけでは無味乾燥になるきらいもあってか、甲斐甲斐しい妻とのロマンス的な演出もしっかり描写しているのが映画的。人のために私財をなげうって、意地になってしまう主人公の描写は、ありがちな映画的技法ではあるのだが、それでも大河内伝次郎の鬼気迫る演技力と、その行動力に連鎖されていく周囲の人間達を見ているだけでとんでもない作品だと思わせてくれる。だから本作の最大の見所は狂気であると断言しよう。

 ところで現在で言うところのイノベーション。現在は軽く扱われているきらいがあるものの、歴史とはそのようなイノベーションによって形作られるもの。これによって多くの人の命を救うことになり、結果多くの子孫が残されている。

 そんなイノベーションの中でも、食糧増産に成功したというのは大いに賞賛されることになる。富国強兵を国是とする日本において、食料革命を起こした人物を盛んに賞賛していくこととなった。ただ、これって生態系の破壊にもつながるため、現在ではもう作られることはなかろうな。

(評価:★4)

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