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[コメント] サタデー・ナイト・フィーバー(1977/米)

同じトラヴォルタ作品で、本作の後に『グリース』を観ると、僅か一年でハリウッドがどれだけ変わったかよく分かります。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 ディスコに通うブルーカラーの青年について「ニューヨークマガジン」が書いた記事を元に脚色された作品で、封切り後僅か18日で2,100万ドルを稼ぐ大ヒット。1977年全米興行成績も3位という成績を残している。

 本作によってディスコ・ダンス映画というジャンルが確立したが、映画界にあっての影響はそれだけではない。本作がおそらく60年代後半から続いてきたニューシネマに一応の終止符を打った作品とも言える。そもそもニューシネマの土壌とはヴェトナム戦争時のアメリカ社会の閉塞感によるものだったが、そのヴェトナム戦争も1975年に一応の終結を見せ、そこからハリウッド映画界も新しい映画の形態を模索していくことになった。

 本作も一応ニューシネマの末尾にぶら下がるような話で、“今の自分”というものから目を背けていた青年が初めて人生と直面する姿が描かれており、踊って憂さを晴らすことしかできなかった青年が、様々な偏見と出会うことで自分を知っていくという精神的な成長物語である。

 この辺はニューシネマの特徴を良く捉えていて、特に日中の乾いた描写は、充分にニューシネマっぽさに溢れている。ただし本作が志向しているのは、日常の閉塞感や打破と言うよりは、一芸持った若者が悩みつつも、新しい生活を始めていこうとする姿であり、それが非常にポジティヴな印象を与えてくれる。この姿勢こそがこれまでのニューシネマとは大きく違う点であり、本作の大ヒットは、実質的に映画が新しい段階へと踏み出す力を持ち始めたと言うことに他ならない。

 とまれ本作の最大のヒットの要因はやはりダンスシーンで、ビージーズの歌の大ヒットも招くことになる(レコードはシングルカットされた曲の内5曲が同時にランク入りというレコード史に残る売り上げとなる)。

(評価:★3)

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