コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] L.A.コンフィデンシャル(1997/米)

三者三様に持つコンフィデンシャル(秘密)。それが複雑に絡み合うことで事件全体の秘密に厚みを持たせる…表題がここまで見事にストーリーに関わってるとは。見事!
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 実は全然期待もしてなかった作品だったのだが、一見してその“こだわり”に気づき、非常にはまった作品だった。

 ハリウッドでは数多く作られる刑事物だが、アメリカにおける刑事物というのは大体年代が定まっていて、禁酒法の時代が顕著で(この場合は刑事物と言うよりはギャングものというジャンルにはいるか)、他にも若しくは現代か、それより少しだけ未来の話が多い。その時代ならともかく、20世紀末になって50年代の刑事物を作ろうとしたその姿勢が面白い。しかも相当のこだわりをもって作られたらしく、小物や音楽など、レトロ性溢れるアイテムが次々と登場する。丁度この時代の映画を観ることが少なかったわたしにとっては逆に目新しいものばかりで、その“こだわり”がなかなか嬉しい配慮だった。

 “こだわり”はそれだけではない。先ずこのキャストの蒼々たるメンバー!。後にオスカー男優となるケヴィン=スペイシーラッセル=クロウを一緒に登場させるのは先見の明と言うべきだろうし、悪い言い方だが、極端な個性を持たないこの二人だからこそ、一緒に登場してもバランスが保てた(『ヒート』(1996)のパチーノ&デ・ニーロは個性がぶつかり合いすぎて、キャストが豪華な割に印象が薄かったし)。そのバランスの良い配置も上手く出来ていた。更にガイ=ピアースが又憎らしげなエリートを好演。華を添えていた。

 ストーリーに関しては、骨格となる事件そのものはよくあるハリウッドものを踏襲しているので、やや地味な印象を受けたが、観進んでいくと、これが又、味わい深い。三者の捜査方法が独自で個性あるし、個々のストーリーがおもしろい具合に絡み合うので、ストーリーそのものにも深みを与えている。更に途中でスペイシーがあっけなく退場するのは驚いた。この驚きがストーリーの肝だな。

 そして本作の最も大きな“こだわり”とも言えるべきは「コンフィデンシャル」という言葉にこそある。これはスペイシー演じるジャックが「L.A.コンフィデンシャル」という雑誌のアドヴァイザーをしていることから。と言うことを意味に含めるが、「コンフィデンシャル」とは「秘密」を意味する。主人公の三人、それぞれに捜査を阻害するような秘密を持っていて、それを表向き隠しながら捜査を進めていく。それぞれの自己のアイデンティティをこの事件において掘り下げていくと言う過程を辿るのが大きな特徴で、外面だけでなく、内面における葛藤を見るのが面白い。これもまた素晴らしい“こだわり”だと言えるだろう。三人が三人ともそう言う意味ではちゃんと個性を出しつつも、決して相手を食ったりしてないのは、やはり名優たる素質であり、同時にそう言うキャラクターを作り出した脚本と監督の巧さだろう。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。