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[コメント] スティーブン・キング 痩せゆく男(1996/米)

超常現象は必要ない。金とコネさえあれば誰だって呪術者になれると言う例。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 バックマンの名前で出されている作品群は、それまでホラーというジャンル作家としてしか見られていなかったキングが、俺にはこんなのも描けるんだぞ。と言う意地が垣間見える作品が多く、本作はそれまでのキング的なホラーからは結構離れた位置にあるように思える。本作の場合は特にラストのオチはとても気に入ってる。

 小説としてはかなりの長編になるが、実際映画になってみると、僅か90分ほどの時間でちゃんと収まり、すっきりした作品に仕上がっていた。ただ、これは良いことばかりではない。痩せていく課程でもう少し最初喜んでいて、それが恐怖に変わっていくと言う心境の変化が今ひとつ感じられなかった分、怖さの演出は今ひとつと言ったところ。最初喜んでいたのが、だんだん怖くなっていくと言う演出もう少し出せていればもうちょっとホラーっぽくなったかな?。それと原作でも暴れ回っていたジネリのパワフルさは映画版でも健在。容赦なく殺しまくり、だまし、恐喝する。それをいかにも楽しそうにやってるところなんかはなかなか小気味よし。ラストもこっちの方が余韻が残っていてかえって良かったくらい。ジネリが殺されるシーンが無かったのはちょっと惜しかったか?

 本作に明確な意味での「正義」はない。呪いの連鎖によって人が次々死んでいくと言う、極めて乾いた描写で彩られる。ほんの少しの交流の失敗が泥沼と化し、シャレにならなくなるのは人間関係でも良くある事。と言うより、こうして人間関係を次々駄目にした自分自身の事が思い起こされて…別な意味で私にとってホラー作品でもあったな。

 本作の売りだった130キロから55キロ痩せていく過程は『マスク』や『ミセス・ダウト』で腕を振るった(他にもマイケル=ジャクソンの『スリラー』のプロモーションも手がけている)売れっ子メーキャッパー、グレッグ=キャノン。本作には彼の手による気持ちの悪いメイクが沢山出てくる。メイキャップのみならず、体型の変化はプロセスティックという人工装具を用いたそうだが、とても自然に見える。

 外れの多いキング原作映画ではかなり健闘した作品だろう。

(評価:★4)

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