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[コメント] オーディション(1999/日)

これは大当たり。マジで怖かったし、今になってもやっぱり怖い。日本の生んだモダンホラーの一作としては確かに捨てられない作品だろう。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 三池監督の名を最初に国際的に有名にさせた作品が本作であり、事実世界的なホラー作品のオールタイムベストには常連の作品でもある、和製ホラーの傑作の一本に数えられる。

 ただし、本作の作りはホラーではない。超常現象が起こるわけでもなければ、シリアルキラーが出るわけでない。むしろ純粋なサスペンス作品と言うべき。

 …なのだが、確かにこれは間違いなくホラーだ。しかも最高の。

 本作はものすごくチープな作り方をしている。登場人物は限定的で、舞台もその大部分が密室の中。撮影に金がなかったんだろうな。でもこのチープさを楽しむのも一つのおもしろさだ。なんて思っていたし、別段お化けが出そうでもないし、さほど怖いわけでは…

 最初の30分頃までは確かにそう思っていたのだが、その辺過ぎたあたりからどんどん怖さが増してくる。静かに静かに、しかし着実に壊れていく人間の姿を舐めるように映し撮るカメラ…

 お化けじゃなく、人間が怖くなり過ぎてる。人間しか出てないのに、そこには紛れもない恐怖が潜んでる。いや、潜んでるなんて生やさしくない。静かすぎる狂気に裏打ちされた、紛れもない怖さだったし、なによりも痛さの描写が並じゃない。ホラーで印象深い言葉が出るのは滅多にないのだが、この作品では「キリキリキリキリ〜」という、あまりに恐ろしい台詞が耳にこびりついて…

 これを可能にしたのは、マイクを徹底的に口に近づけることによる、独特の演出を作り上げた事なんだろうと思う。これによって、むしろ滑舌の悪さを強調し、耳を澄ませることで吐息まで聞こえるようにさせた。そこでぽつぽつ語られる台詞のテンポに飲まれてるうちに、言葉の端々に出てくる狂気を感じさせる。そもそもテレビでやるような演出を逆に映画的にしてしまったことが本作の最大の強みだった。 

(評価:★4)

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