コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ワン・フロム・ザ・ハート(1982/米)

コッポラの気合いが入りすぎて空回りしっぱなしの作品でした。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 ラスベガスという、一種夢の街を舞台にした、本当に夢のような出来事を描いた作品で、『ハメット』(1982)に続くコッポラが設立したゾーエトロープの第2回作品。

 多くの成功作と失敗作で知られるコッポラ監督の失敗作の一つと言われるのが本作。それは事実で、しゃれた都会風の恋愛話にミュージカルシーンをくっつけた軽い作品のはずが、話が妙に重めになり、ミュージカルシーンも凝りすぎて、ちょっと消化不良を起こしたかのような作品になってしまった。

 多分それは本作を完全セットで作ったと言うところに一つの理由があったように思わせる。昔のハリウッド作品は基本的にセット撮りなため、こういうパターンが多かったのだが、『ウエスト・サイド物語』(1961)以来、観客の目は、もっとオープンに、広がりを持ったミュージカルシーンに目が慣れていくようになっていた。

 しかるに、本作のミュージカルシーンはわざとセット撮りを際だたせるように作られているため、閉塞感を感じさせてしまうのだ。古き良き時代を思わせようとしてのことだったのかも知れないが、それを強調しすぎたため、かえって嘘くさくなって入り込めない作品になった。

 ストーリーについても、ご都合主義を多用して、ファンタジー性を増したのが余計物語の足を引っ張った。妙に重い物語に、軽快な設定を加えたお陰でこれも嘘っぽさしか感じられず。ドロドロした恋愛話を延々見せられるといい加減鬱にもなろうというものだ。

 尚、ゾーエトロープの1作目『ハメット』もセットに凝りすぎたために資金不足になったそうだが、2作目の本作もラスベガスのミニチュア・セットなどに凝りすぎ、更にデジタル機器を多用したため製作費が途中で底をついてしまう。結局パラマウントの助けを借りて公開にこぎ着けたという。

 結果的にコッポラが作り上げた製作会社ゾーエトロープは、この2作のお陰で低迷。監督もスランプに陥ってしまうことになる。

(評価:★2)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。