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[コメント] 遠すぎた橋(1977/英=米)

こんなに爽快度の低い戦争映画が成立させられたところが凄い。これが戦争のもう一つの面だろう。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 欧州戦線における連合軍唯一の失敗と言われるマーケット・ガーデン作戦を描いた作品。本作戦はこれまで破竹の進撃を続けてきた連合軍の初敗北であり、9日間で実に戦死者戦傷者行方不明を合わせて1万7千人以上という大失敗となった。

 基本戦争映画、しかも連合軍の側に立った作品は勇猛果敢にドイツ軍なり日本軍を駆逐するように描かれているのだが、この作品については、明らかな失敗作戦を描いており、戦いの演出もかなり陰湿な感じ。爽快さという意味でもかなり低い。そもそもこんな作品を役者上がりの監督にやらせるなど、金をドブに捨てるつもりでいるのか?と会社の正気を疑うようなものになってしまった。その辺は流石チャレンジ精神の高さを誇る(映画の斜陽とも言う)70年代後半作品。

 …と、まあ、無茶苦茶な事を書いているのだが、この作品が面白くないのか?と言われると、さにあらず。いや、実際に定番の戦争映画ではないからこそ、本作の特異性が顕著に観られる。その点において、本作は戦争映画の一つの方向性を指し示すものとも言える。

 本作の面白さの一つは、本作が群像劇であるという所。現場サイドから見たら無能な上司も、本人はその場で出来るだけのことをしようとしているのだろうし、これまでドイツに支配されていたオランダ国民が諸手を挙げて連合軍を迎えた訳ではないという側面もあったりと、戦争は決して一面だけを見ていればいいと言うものではないことを示している。「戦争は悲惨だ」「勝てば官軍」「庶民とは関係なく戦争は起こる」…様々な部分を見せてくれるのも良い。

 でも、多分こんな感想を抱くのは、この作品を観た時って、勝手極まる上司の下で悶々としながら仕事していたという時代だったからだと思う。自分の置かれた境遇に色々重ね合わせてしまったため、やけに沁みる作品だった。

 変わり種の作品ではあっても、私にとっては結構重要な作品の一つだし、こんな戦争映画があっても良いと思わせてくれたことで評価したい作品でもある。

(評価:★4)

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