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[コメント] 海は見ていた(2002/日)

監督やスタッフはとても頑張ったんだろう。その努力は認めるけど、黒澤監督の亡霊に悩まされすぎた。冒険がない作品に魅力はない。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 黒澤明が自ら31作目の作品として脚本まで書き上げながら、結局実現することがなかった原稿を熊井啓監督が映画として仕上げた作品。

 黒澤ファンとしては、やっぱりチェックしておきたい作品ではあったが、しかし何というか、晩年の黒澤作品というのはなんともまあ…ってな感じなので、とりあえずテレビで。

 一見して思うのは、これは黒澤明の作品ではないな。山本周五郎の作品を丁寧に作ったというだけの作品。しかも丁寧に作りすぎたため、単なる人情話になってしまってる。本来笑わせるべき所を笑わす事が出来ず、息詰まるシーンであるべき部分も淡々と過ぎる。若い頃の黒澤に撮らせてれば、こんな何事もないシーンも凄く見栄えがするんだろうな。とか思いながら観てしまったため、結局不満しか残らない作品になってしまった。

 黒澤明監督の遺作としても、山本周五郎原作の映画化としても、全部中途半端。本作こそ読んではいないものの、山本周五郎作品の面白さとは、単なる人情で終わってないところにある。江戸時代らしく、本音を隠しつつ、相手の心を知ろうとする疲れそうな会話と、そこに敢えて本音をぶつけることで起こる波紋。そして抜刀してにらみ合うところの緊張感。その辺が全てきちんと文章化されているから面白い。確かに最終的に人情話に持っていくことが多いけど、そこから目立つ部分だけを取り出してしまっても、本質はそこじゃないからやっぱり駄目なんだよ。

(評価:★2)

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