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[コメント] 太陽の季節(1956/日)

和製ヌーヴェル・ヴァーグの始まりと言うよりはATGを先取りした作品のように思えます。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 石原慎太郎のデビュー作であり、芥川賞受賞作を映画化した作品で、1956年邦画興行成績7位。

 そもそも日本人は右に倣えの風潮が強く、特に金に関しては、金を持っていること自体に罪悪感を持つ風潮があったが、原作は、「金持ちで何が悪い」と完全に開き直っていたのが大きな特徴。今から考えると、デビュー当時から慎太郎節は健在だったって事になるんだろうけど、原作が当時の文壇に与えた衝撃は大きかった。

 無秩序な若者のエネルギーがそこには溢れており、石原慎太郎の髪型をまねた“新太郎刈り”とアロハシャツにサングラスで遊び回る“太陽族”なる言葉が出来て、社会現象にまでなった。

 それをいち早く映画化したのが本作というわけだが、物語そのものは原作に準じていながら演出部分で失敗。むしろ今観ると、この作風は後のATG作品っぽく仕上がっていると思える。

 何となく金持ちの道楽ってよりは、貧乏ったらしい青春賛歌って感じ。あれだけ金持ちを演出してるというのに、それが浮きっぱなしに見えてしまう。ラストも「分かっちゃいねえ」という長門裕之演じる主人公の方に「分かってないのはお前の方だ!」とツッコミを入れたくなる。

 それでも本作と同年公開された『狂った果実』によって日本のヌーヴェル・ヴァーグが始まったと考えるならば、日本映画界にとっては充分意味があったのだろう。

(評価:★3)

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