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[コメント] ハリウッド★ホンコン(2001/仏=香港=日)

ウネウネと、狭いバラックと人の間を縫いながら動き回るカメラと、良く分からん嫌悪感すれすれの不思議な余韻。 2004年2月15日劇場鑑賞
ねこすけ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







若い女性に狂わされていき、そして騙される。その手口に、アホな俺は「なんてけしからん女だ!」と一人憤っていた訳でして、劇中の誰に一番感情移入したか、というのは、誰と言っても、あの兄貴とそのオヤジ、そして左手が二つになったタイガー君な訳でした。そういう訳で、クライマックス、サイ(末っ子)が「走(=逃げろ)」と言う文字を書いた旗を振りながら走る姿に、激しく怒りを感じ、「てめー、ガキは黙ってろ!男を卑劣な手段で騙してぬくぬくと生きてる様な野郎は許せん!」と、一人劇場で憤る俺。って、良く分かりませんね。

そりゃ、アホな男が勝手に自滅して滅ぶ、とかそういうのは勝手だよ?だけどね、「アナタの事が好き。彼氏になって(=料金不要)」と言ってみたり、「あなたってかわいい」と彼女ヅラしておいて後から金を請求してみたり、そりゃ違うだろ!!しかも、騙す相手は取り壊し直前のバラック街に住む貧しい奴ら。何か間違って無いか?この脚本。

この話、監督は、中国返還後、中国に影響を受けながら近代化が進む影で、嘗て中国からの移民を多く引き受けていた最後の下町の取り壊し、と言う現実。その現実の中で、明日への不安を感じながら、生きていく人々と、しかしそれでも活気に満ち溢れた町並みとか、その香港の未来、そこに生きる若者たちの姿とか、を描いた、とか、俺には良く分からない事を言っている。

正直、香港の現実は良く知らないので、何がどうなっているのか良く分からなかったし、劇中で強調されていた、香港人の中国人に対する考え方とか、そういうのは良く理解出来なかった。監督本人も、今までプロ俳優をあまり使わなかったのは、作品を「日常」に近づける為、と言っている辺り、香港の「今」が分からないと、作品に込められたメッセージってのは理解できないのではないのか?と思う。それを分かり易く見せるのが映画って物では?そういう点をもっと丁寧に描いてくれないと、頭の悪い俺には良く分からない。

そういう訳で、俺には一体何が描きたかったの?と思わざるを得ない。若者像も、普通に過ごしているだけで、イマイチそこに切羽詰った危機感やら、閉塞感とかそういうのを感じられなかった。監督は、単純にストーリーを語るのではなく、そこに何かしらのメッセージ性やらを含んで、”現在の”香港を描いているのだろうけど、俺にはさっぱりわからんかった。俺が頭悪いだけ?

本筋の話も、少女に狂わされて破滅していく人々と、その少女に恋をした少年って訳だけど、最後に残ったのは嫌悪感すれすれの微妙な余韻だった。ビターで、しかしスイートな寓話、とか言うみたいだけど、俺個人としては「だから?」な映画、でしかなかった、と言うのが寂しい。果たしてあの結末は「ビター」と誉められる結末なんだろうか?

個人的に、ラストで、女主人公がハリウッドに行ってハッピーエンドっぽい終わり方も、騙された側に感情移入(?)しまくりだった俺には納得できない結末でしかなく、香港の現実、と言うのもイマイチ感じられない中途半端な作品、と言う印象しか残らなかった。

要するに「売春しちゃダメよ?」って言いたい訳か?って、それが監督の描こうとした「香港の今」なのか?って良く分かりませんがな。

ただ、下町の狭い中をウネウネと動き回るカメラワークと、オープニングのテロップの出し方や、人物の描き方、そして随所に挿入されている「笑い」など、下町の貧しい中でも苦しくも幸せに生きている人達の感情が描かれている点は凄いと思った訳で、この作品、根本的に結末を変えてくれれば(少なくとも俺にとっては)良い作品になれたと思う。

とりあえず人を騙してぬくぬく生きている女がハッピーエンドで映画は終了、なんて結末、納得できる訳が無い。そう展開するなら、観客の、彼女への感情移入がし易い様に描くべき。

(評価:★2)

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