この映画の凄みは桟橋のショットに尽きると思う。足元のロープに手を伸ばそうとかがみこんだ瞬間、水面から巨大ワニが現れて桟橋ごと丸呑みする。巧いのが、食いちぎられた桟橋をそのまま捉えるカメラ。この「・・・ないっ！」（あるいは「さっきまであった」）っていう感覚にこそトビー･フーパーの考えるホラーが顕著に現れているだろう。あのショットが拝めたというそれだけで、フーパーに一生ついて行けると再確認出来た（誤った一生）。

　例年ゴミのように生産されるＣ級ティーン・ホラーを堂々と（バカ増量で）踏襲する基本筋に、あっけなくボートから落ちて犠牲となる執念のワニハンターや「使えない」チェーンソーなど、どこか自嘲的な色を帯びた笑いが随所を彩る。あるいは、特に本筋に絡む訳ではない「呪われた洋館」とか。男女の三角関係も一人がワニに食われて綺麗サッパリするのだから、人道性の欠片もない（笑）。

　ちなみに、私の所持するビデオのパッケージによると、「・・・トビー･フーパーが5年間の構想を経て今度は映画史に残る最強の爬虫類を作り上げた」そうなんですが、結論はともかく、前半は嘘だと思う。