コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] BRICK ブリック(2005/米)

ノワール映画、高校に行く(ただし、授業は自主休講)。雰囲気としては、『ツイン・ピークス』というより『ミザーナフォールズ』か。いつの時代・どの場所でもないような田舎町の造形は、面白いが、やや病理的。ノーラ・ゼヘトナーは美人。(2011.8.8)
HW

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 要するに、1940〜50年代のハリウッドのノワール映画を、90年代以降のミニシアター系青春映画の雰囲気で撮っている、とでも言ったらわかりやすい。徹底して映画から作られている映画で、現実との接点というものはない(その点、映画のある日常を示唆する、映画オタク的な引用ともまたすこし違う)。

 主人公もヒロインも行動原理はノワール映画のそれで、高校生としてのリアリティははじめから問題とされていない。「ブレイン」と呼ばれる相棒や、杖を握る黒ずくめの「ピン」を見れば、その点はますます明瞭。ノワール映画的リアリティが学園モノの映画的な世界に導入されているのである。携帯電話が登場するが、時代設定は不明。麻薬を売りさばく犯罪組織の存在が描かれるが、都市的な空気は映画の世界から完全に閉め出されている。『ツイン・ピークス』を思わせるとすれば、ミステリー的なプロット面においてでも映像面・演出面においてでもなく、なによりこの閉じた小さな世界という舞台設定の部分においてだろう。

 ただし、プロットそのものはラストのヒロインとの会話までいたって古典的。その点、かなりユニークではあるが、たぶん「衝撃作」ではない。意外な結末といった要素ははじめから追求されていないのである。むしろ陳腐化しているものを陳腐と承知したまま新たな趣向で楽しませているのが、この映画の奇抜さといえる。見る側の期待の内容によって、印象がだいぶズレる映画だろう。個人的には楽しんだ。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。