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[コメント] マルタのやさしい刺繍(2006/スイス)

おしゃれは下着から。2008.11.22
鵜 白 舞

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







これは女の感覚の映画だ。調べたら監督はやはり女性だった。

下着、というと何かいやらしい秘密めいた響きがあるのだが、この映画に登場する下着にそういう意味は無い。日常的に下着を身にまとう女性なら純粋に思うことがあるだろう。レースのついた下着は、刺繍の入った下着は、きれいだな、と。主人公の女性はそういった想いを「恥ずべきもの」と思い込み、友人によって認められるまで胸の奥にしまいこむ。

主人公が下着を美しいと思う気持ちを確認し下着屋を開くときの、批判はすさまじい。息子には蔑まれ、友達は去り、下着はゴミ箱へ。しかし彼女はそんなことをものともしない。信念を持った彼女は強いのだ。次第に周囲が理解と共感を示すとともに、周囲も変わっていく。

つまり、この映画は老女の社会進出をテーマにした寓話だ。だから極端に女性的なものとして下着が選ばれ、田舎が舞台となり、若い息子達はステレオタイプに悪党なのだろう。単純に出来ている。こうやってあらすじを話そうものなら「ありがちな話だね、ふーん」と言われるだろうか。

でもでも、と言いたい。映画は話だけじゃ語れない。あの田舎風景、丘のその先の丘まで続く緑。刺繍の繊細さ。ただの老女がラストシーンには輝くばかりに綺麗になる様には、女優の貫禄がある。今思い返してみても、観てよかったとしみじみ思える映画だ。

(評価:★4)

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